韓国の世界陸上で、ついに健常者の大会に出場
――ハングリー精神がすごかったのですね。
越智 そこから仲良くなって、国際大会で会えばご飯を食べたり。とにかく「健常者と同じくオリンピックに出たい」と。「オリンピックに出れるぐらいの記録をあとちょっとで出せる」って言ってて。もう僕の中では「推し」みたいな感じで、特に追いかけた選手でした。
その選手が、2008年の北京五輪のときは両足義足だからと出れなかったのが、スポーツ仲裁裁判所に訴えて、結局出れることになった。結果的に北京五輪出場は叶わなかったものの、その後の北京パラリンピック陸上短距離では金メダルを3つ獲得しました。
そして2012年のロンドンオリンピックの前年、韓国のテグで行われた世界陸上で、ついに健常者の国際大会に出たんです。
――夢が叶った瞬間に立ち会った。
越智 あー、やっと夢がかなったんだっていうときに、もう涙が止まらなくて。予選を通過して、セミファイナルまで行って。あのときの走っている姿は、一コマ一コマ全部覚えてます。
(※編集注 2013年に交際相手を射殺した罪で有罪判決を受けて服役。2024年1月に仮釈放された)
――彼のような反骨精神を持つアスリートは、今も多いのでしょうか。
越智 今は違いますね。当時、「オリンピックとパラリンピックの違いはないんだっていうのを証明したい」と話すアスリートは、日本の選手も含めてすごく多かった。
でも今はもうそこまで言わなくて。例えば東京マラソン一つとっても、賞金は健常者だけでなくパラのほうも付くんですよ。ロンドンマラソンに至っては、健常者と金額が変わらないぐらいまで来ている。そういったところでどんどん変わってきているんです。
純粋にスポーツとして世界一を目指すようになったパラ選手たち
――環境が変わった。
越智 だから、言い方はちょっと悪いですけど、ハングリー精神、反骨精神みたいな、「俺たちはできないと思ってるだろ、違うよ」みたいな発信をしてくる選手は少なくなってきたように感じます。
でも逆に言うと、純粋にスポーツとして世界一を目指すっていうところにフォーカスできてる。本当に、トップアスリートに限るかもしれないですけど、オリンピックとパラリンピックは違わないところまで来ているのかなという感じはします。
――パラスポーツを撮り続けて約30年、社会の変化以外に、カメラマンとして変わったことはありますか。
越智 カメラマンが増えたこと、これは単純にうれしい。めちゃくちゃうれしいです。ほかのカメラマンがどんなふうに撮ってるのかが見れるわけですよ。そこから勉強できることもあるから、「おー、こんなふうに撮ってんだ」って。「あー、負けたな」とか「勝ったな」とか、楽しくなるんです。

