パラスポーツを国内外で撮影し続けている写真家・越智貴雄さん。

 2014年には義足の女性たちにフォーカスした写真集『切断ヴィーナス』を出版し、その後、義足の女性たちのファッションショーも開催している。そんな彼にパラリンピックを撮影し始めたきっかけやパラスポーツに対する社会の変化、日本と海外の視点の違いなどについて話を聞いた。

越智貴雄さん

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野球が日常だった地域に住んでいた子ども時代

――これまで冬季含めて13大会のパラリンピックを撮影されていますが、元々スポーツには馴染みがあったのでしょうか。

越智 私自身、結構スポーツには馴染みのある地域に住んでいたというのもあるんです。藤井寺球場の近くで。

――近鉄バファローズの本拠地でしたね。

越智 今はオリックスになっちゃってますけど、年間130~140試合あるうち、ホームの試合が約半分。そのうち50~60試合は行ってたんじゃないですかね。

――相当な野球好きだったのですね。

越智 好きとかそういうんじゃないんですよね、あまりに日常で。昔の近鉄バファローズは結構弱かったと思うんですけど、何か信じられないようなミラクルなシーンを見せてくれたりするんですよ。

 いつも弱いのに、時たま、むちゃくちゃバカバカ打つような時とかあったんです。当時は「いてまえ打線」と呼ばれていたんですけど。あとスーパーヒーローの野茂英雄さんが突然入ってきて、トルネード投法だったかな。とにかくすごいものを見せてくれたんです。

忘れられない近鉄バファローズの試合

――日常の中に、非日常的な興奮があった。

越智 小学校5年生だったか6年生のときに、巨人との日本シリーズがあったんです。野次がすごくて、子どもの自分には、「むちゃくちゃ弱いチーム」という印象があったんですけど、初制覇まであと1勝というところまで行って。

 忘れもしない「3連勝後の4連敗」。最初3連勝して、その後4連敗して負けちゃったんですけど、そのときのことがずっと忘れられなくて。最後の第7戦は3勝3敗で迎えた藤井寺球場での試合だったんです。チケットなんて全然取れなくて球場に入れず、球場の周りを囲んでたくらいで。

――球場の外で。

越智 ラジオと声援を聞くだけでも至福の時間みたいな感じだったんですけど、負けちゃったときに放心状態になって。1時間呆然とじーっと立ってたらしくて。その場から動けなくて。

――それだけ衝撃的な負け方だったと。

越智 3連勝したから絶対勝つと思うじゃないですか。

 今になってニュース報道とか見ると「その発言はなかった」と言われてるらしいんですけど、ある投手の方が「巨人はロッテより弱い」って言ったらしいんですね。それが広まって、そこで巨人が一気にギアを上げてきたみたいなストーリーもあるものだから、なおさら「え、負けへんよな、負けへんよな、日本一なるよな」っていうのがあって。

 

 当時は野次もすごかったですよ。今とは比べ物にならない。カップヌードルとかを突然誰かが外野席からグラウンドに投げ入れたり、鉄塔によじ登る人が出たり。でもそれが日常なんですよね。アナウンスで「ただいま外野スタンドからラーメンが投げ込まれましたので中断します」みたいな、普通に進行していく感じで。