――注目度が上がったからですね。

越智 これは日本国内外問わずですね。どんな大会に行ってもカメラマンはずっと僕一人だったのが、フリーランスの方や雑誌、新聞の方が増えていって。みんなが寝っ転がって撮るようにもなったし。社会は確実に変わったと思います。新聞の扱い、テレビの扱いも。

2020年、本来東京パラリンピック開会式の日に、高輪ゲートウェイ駅で開催した「切断ヴィーナスショー」。海音さん。 ©︎越智貴雄

 だって今、小田凱人選手の試合結果が社会面に出ていたら、ファンは怒りますよね。「推し活」的に車椅子バスケとかも注目されていて。鳥海連志さんとかもしっかり「推し活コミュニティ」みたいなものができている。健常者のフィギュアスケートとかバレーボールまではいかないですけど、コミュニティがある分、メディアでの取り上げられ方も変わってきています。

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パラスポーツを始める若い世代の「環境」はまだまだ整ってない

――改めて、パラスポーツの魅力とは何でしょうか。

越智 いまだに、「え、うそ、マジか」みたいなことがあるんです。口でラケットを咥えてサーブする卓球選手とか、今やっているアジアパラ大会でいえば、四肢全部が切断しているアーチェリー選手とか。「マジかよ」みたいなのが溢れてる。

 なんて言ったらいいのかな、「なんでここまで挑戦しようとするんだろう」みたいな。そこはやっぱパラスポーツの一つの魅力かなと思います。

――最後に、パラスポーツの未来について、求めることはありますか。

越智 求めることと言ってしまうと、ちょっとおこがましいんですけど、「環境」ですね。トップアスリートたちの環境は、昔に比べれば本当に改善されました。スポンサーを探すのも大変だったのが、今は大手企業が雇用してくれたりする。 

 一方で、これからスポーツを始めようっていう若い世代の人たちにとっては、環境がまだまだ大変なんです。

――具体的には、どのような点でしょうか。

越智 まず、スポーツをする場所。障害のある人がスポーツをする場所っていうのが、日本では結構限られてるんです。令和6年の障害者白書では、国民のおよそ9.2パーセントがなんらかの障害を持っているとされています。

 その中で、笹川スポーツ財団の調べによると、障害者専用・優先のスポーツ施設は全国に161カ所しかない。しかも、アクセスが悪いところが多いんです。だから、スポーツをしようと思っても、すぐにできる環境がなかなかない。

『切断ヴィーナス』より金子美南海さん ©︎越智貴雄

――施設が圧倒的に足りないと。

越智 同財団の試算では、障害のある人たちがスポーツをするには、約1200施設は必要だと。それぐらい、とにかく環境が整っていない。

 ドイツやスイス、イギリスとかは、障害のある人たちがスポーツをしようと思ったら、ネットで調べれば誰でもどこでもパッとできる場所がある。それが日本では、障害があるっていうだけで極端に少なくなっている。この状況は変わっていけばいいなと。僕は政治家でもなんでもない、ただの写真屋なんで何もできないんですけど、そこは変わらなければいけないと強く思いますね。

 

写真=釜谷洋史/文藝春秋

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