「私の顔を潰したわね」――1935年12月、米ロサンゼルス。私設ガレージに停められた車の中から、29歳の女優セルマ・トッドの遺体が見つかった。ハンドルに突っ伏し、エンジンはかかったまま。

 彼女が亡くなる直前、ある男と激しいトラブルを起こしていた。事件の発端を、鉄人社の新刊『知ったら最後、夜眠れなくなる 世界の未解決ミステリー68』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目)

誰が彼女を殺したのか? 写真はイメージ ©getty

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車から見つかったのは29歳女優の遺体

 1935年12月16日午前10時半ごろ、米ロサンゼルス、パシフィック・パリセーズの丘の上にある私設ガレージ内の車内で、崩れ落ちるように倒れる女優セルマ・トッド(当時29歳)の遺体が発見された。

 彼女は“アイスクリーム・ブロンド”の愛称で知られ、バスター・キートンやマルクス兄弟の作品でコメディエンヌとして活躍したハリウッドのスター。遺体は車内でハンドルに突っ伏した状態で見つかり、エンジンはかかったままだった。

 前々日12月14日夜、セルマはハリウッドのナイトクラブ「トロカデロ」で開かれた大規模パーティに出席していた。主催者は喜劇俳優スタンリー・ルピノ(同42歳)と、彼の娘で女優のアイダ(同17歳)。

 華やかな夜会だったが、セルマは前夫パスカーレ・ディシッコ(同26歳)と口論になった。パスカーレは見せつけるように2人の女性を連れ会場に無断で現れ、セルマの顔をいきなり平手で叩いたという。これに激怒したセルマは「私の顔を潰したわね」と詰め寄った。

写真はイメージ ©AFLO

 パーティ後、リムジンで自らが経営する「セルマ・トッドのサイドウォーク・カフェ」へと戻る途中、運転手に「ギャングが尾行しているわ。もっとスピードを上げて」と言い、時速110キロで疾走させた。午前2時ごろカフェに到着。「おやすみなさい」と運転手に告げたのが生前最後の姿となった。

次の記事に続く 顔面には打撲傷、喉に異物を押し込まれた痕跡が…《29歳・女優死亡事件》あまりに奇妙なその後(昭和10年・国外事件)