人気ロックバンド「トリプルファイヤー」でボーカルを務める吉田靖直氏は、「神主」としての顔もあるという。吉田氏が自身と「神職」とのかかわりについて語った。

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 大学時代に組んだロックバンドを、39歳になった今もまだ続けている。世間に広く知られるほど売れてはいないが、一部の好事家からは好いてもらっている。結成当初から考えるとありえないくらいの数のお客さんに見てもらえるようになった。ありがたいことだ。

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トリプルファイヤーのボーカル・吉田靖直氏(公式YouTubeより)

 一方、私の実家は香川県三豊市にある浪打八幡宮という神社を運営している。町内では大きな神社だ。父親は宮司で、3人姉弟の末っ子長男である私は子供の頃から「早く大人になってお父さんの跡を継ぐんだよ」と言われ続けてきたにもかかわらず、大人になるどころか中年に差し掛かった現在になっても東京でバンド活動を続け、高齢の父親に宮司の任を担ってもらったままである。

 なかなか親不孝な状況であるが、一応子供の頃から神社の仕事を手伝ってはきた。22の時に國學院大学の神職養成講習会で神職の資格も取得した。神社の繁忙期である年末年始と10月には長期的に実家に帰ってお祭りで祝詞を読んだり、しめ縄作りや新車のお祓いなどいろいろ細かい仕事をしてきた。親が80を超えたここ2年は1ヶ月か2ヶ月に1回帰るようにしている。

 実家が神社だと人に言うと「じゃあ霊感あるの?」とたまに聞かれるが、別にそういう力はない。多分他の神主さんも霊感なんてないと思う。

浪打八幡宮(公式HPより)

 家や会社に不幸が続くのでお祓いをしに来て欲しい、といった依頼が時々神社に来る。そのような場に出向いた際は何か神主自身に不思議なパワーを求められている空気を若干感じるが、神主にできるのは人間の願いを神様に聞き入れてもらおうと努めることだけだ。

 いろいろな状況に応じて、神主が行うべき儀礼や唱えるべき祝詞がある。前例をまとめた本もある。そのセオリーをできるだけ正しく遂行するのが神主の仕事で、神主は人間と神様を繋ぐ媒介に過ぎない。神主が人の願いをどうこうしてあげようと思っても、かえってノイズになるだけだろう。偉い神主さんがどう言うのか知らないが、ペーペー神主の私はそう考えてお祓いなどをしている。

※約1500字の全文は、は月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』と『文藝春秋』2026年11月号に掲載されています(吉田靖直「神職とロック」)。

文藝春秋

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神職とロック

出典元

文藝春秋

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