逮捕された巡査部長は「署長の息子」だった
同じ町内でおそらくただ1軒、事件解決を喜ぶことができなかった家がある。家の主は、現職の幹部警察官。北海道内の大規模警察署の1つ・札幌中央署のトップに就いたばかりだった。ノンキャリアの星といえる椅子に上りつめた署長が頭を抱えたのは、地域を騒がせた連続わいせつ犯が自分の息子だったためだ。2010年に道警に採用された息子はこの春、巡査部長に昇任して札幌北署から苫小牧署に異動、生活安全課で窓口業務を務めていた。
逮捕された巡査部長はその後の取り調べで、16年秋以降の事件の多くを自供することになる。彼自身が記憶する余罪は、先の防犯だよりなどに記録されたケースを含めて少なくとも29件に上った。地元の札幌地検は、そのうち3件で巡査部長を起訴。いずれも現場の路上から精液が採取され、DNA型が巡査部長のそれと一致したことによる。
「やはり未成熟の女子高生に見られるのが一番興奮する」
10月10日に札幌地裁で行なわれた初公判では、本人の供述調書から次のようないきさつが明かされた。
「2年前の夏ごろ、ススキノで飲んで酔っ払い、自宅付近まで帰って来てふと気がつくと、素っ裸で路上に寝ていた。この時、例えようのない解放感と羞恥心に快感を覚えてしまって、それ以来『恥ずかしい姿を見られている自分』というシチュエーションに異常な興奮を感じるようになり、自慰行為をするようになった。成人した女性でも感じるが、やはり未成熟の女子高生に見られるのが一番興奮する」
引き合いに出される「女子高生」はしかし、連続事件の被害者としてはむしろ少数だった。ターゲットとしては小中学生が圧倒的に多い。その理由もまた、本人の調書で明かされることになる。
「中学生なら、まだスマートフォンを持ち歩いていないから、すぐに通報されることはない。小学生なら、陰茎をしごいて何をやっているのかわからず、固まってしまい、じっくり見てくれる」
最初に「快感」を覚えたのが実家の近くだったため、犯行はもっぱらその町内で繰り返されることになったようだ。車で近所を走り、路上で見かけた小学生あるいは中学生に狙いを定めると、相手の歩く道を先回りして車を駐める。すぐに逃げられるよう、エンジンはかけたまま。下半身を露出して女の子とすれ違うように歩いたり、建物などの陰に隠れて見せつけたり……。早く気づいてもらえるよう、自ら「見て見て」と声をかけたことも一度や二度ではなかった。
これだけで充分に倒錯しているといえるが、巡査部長はさらに別の「快感」も求めた。地域を管轄する札幌南署の防犯メールを受信登録したのだ。もう一度、供述から。
「自分がやった公然わいせつ事件が発信されたのを確認し、騒ぎになっているのを見て楽しんでいた」