「光の戦士」大集合

 音楽堂の中に入ると、見渡せる限りの反ワクチン中高年さんたちが満席でぎゅうぎゅう詰めになっていた。これを見下ろせるのは壮観ではあった。そして「ワクチン人体実験阻止」などの数々のキャッチフレーズが書かれた幕の下がったステージには、このイベントの主催団体の共同代表を務める大阪市立大名誉教授の井上正康、作家の河添恵子、当時WCHの日本支部代表だった柳澤厚生、そして作家の林千勝が登壇した。説明不要、反ワクチンさんにとってのヒーローたちである。

 まずは林が「5月31日を日本の新たな独立記念日にしようではありませんか」などと宣言。会場からは大きな拍手と指笛が鳴り響き、思わず涙ぐんでいる人もいた。早く日本から独立して無人島にでも新しい国を作ってくれないだろうかと思っていると、それぞれ短めのスピーチが始まった。最も印象的なフレーズを繰り出したのは柳澤だ。

「皆さんは光の戦士です。皆さんと一緒にいる幸せを噛み締めています」

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「光の戦士」なるワードは第1章の神真都Qのパートでも登場したが、ここでは別物らしく、簡単に説明するとWCHのテーマソング「We Are Warriors」(We are the worldのパク……失礼、リスペクトが込められたような曲)の歌詞に登場する「私たちは光の戦士」のことである。この歌が公開された23年以降、反ワクチン中高年さんたちは光の戦士として、ワクチンを奨める闇の勢力と戦うために生きていくことになったのだった。めでたし、めでたし。

 今さらではあるが、これが陰謀論集団のイベントであることを如実に示す演説もあった。参政党の選挙演説にも登場した河添によるものだ。壇上の河添が「政府や厚労省、WHOはすべて悪魔と思ってください」と述べ、そのまま会場に「悪魔に従いますか?」と尋ねると、客席からは「従わなーい!」と感極まったような声が上がった。河添は続けて「ディープステートは怖がらせる色んなプログラムを持っていますが、我々が強い人間なら困るわけです」「人体実験で多くの人に死んでもらおうとしている。その手足になっているのは岸田(総理、当時)というクソたちです」と言って、会場からは「そうだあ!」と歓声が上がっていた。

 こうしたアレな人たちの集会ではあるが、一般的に名の通った登壇者もいた。体調不良により欠席となったという元駐ウクライナ大使の馬渕睦夫からの「政府が国賊という未曾有の事態」「日本国民は立ち上がりました。おめでとうございます」という内容の手紙が司会者から披露された。

 そして、国内最高の反ワクチン国会議員であられる原口一博の講演もあった。当時まだ立憲民主党所属の衆議院議員。大歓声に迎えられてステージに立った原口先生はまず、「この生物兵器まがいのもので亡くなられた方に哀悼の誠を捧げたい。亡くならなくてよかった命が失われた」と真剣に語った。イベント開催への感謝を述べたあと「国会議員の一人として皆さんにお詫び申し上げます」と静かに謝罪。そして一気にトーンを上げ、「止められるはずだった……亡くならなくてよかった、救えた命を……分かっていながら(ワクチンを)止めない政府を、倒そうじゃありませんか!」と叫んだ。

登壇した原口一博氏(著者撮影)

 いよいよ「5・31日比谷一揆」の様相で、大臣経験のある現職国会議員の絶叫で会場は沸騰して大興奮。指笛、揺れる日本国旗、目頭を押さえる人、涙、涙……。

 憎きワクチンを奨めやがった日本政府への反逆の狼煙はついに上がったのだった。こっわ。

目の敵レプリコンワクチン

 開式宣言をした林からは、「(ワクチンによる)超過死亡数は日本人が無差別爆撃を受けたようなもの」と力強い言葉があり、お気に入りのフレーズなのだろう「レプリコンワクチンは日本人に向けられた3発目の原子爆弾です!」が叫ばれた。

 当時、国内製薬大手のMeiji Seika ファルマが手がけた自己増幅型(レプリコン)ワクチン「コスタイベ」がこの界隈の目の敵になっていた。ちなみに会場ではWCHのおばさまたちが「レプリコンワクチンを止める」署名活動を行っていて、高齢者の参加者たちが恐ろしいほど軽々しく個人情報を書いていた。

 林は「残念ながら3発目は日本政府、日本のメーカー、日本の医師たちによって日本中に落とされます」といった内容を語り続け、客席からも拍手とともに「そうだあ!」との雄たけびが起こっていた。

 なお、この林の説は原口らの口癖にもなり、その末にMeiji Seika ファルマが原口らを相手に提訴することになった。

 林は身振り手振りのパフォーマンスで盛り上げ続け、この音楽堂から見上げることができる厚労省を指し「今のままなら厚労省は解体! その戦犯は……タケミ・タケミ・タケミィー!」と武見敬三厚労大臣(当時)の名を叫んだ。会場中からも自然発生的に「タケミ・タケミ・タケミィー!」と呼応の声が上がった。

※編集部註 本記事は『参政党と大陰謀論時代』(黒猫ドラネコ著/文春新書)の一部を抜粋・再構成したものです。

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次の記事に続く 「ワクチンやめますか、人間やめますか」製薬会社から賠償を命じられた原口一博氏のデモ行進と会場が困惑した“匂わせ”ズッコケ劇