もちろん、中国には日本軍の侵略によって実際に被害を受けた歴史がある。過去の日本軍を描くことと、現代の中国系組織を悪役にすることは同じではない。ただ、なぜこういうドラマが中国では人気なのだろうと興味深かったのだ。
過去は決して忘れないという教訓か、積年の恨みか。それとも、ドラマの中で自分たちの強さを確認したいのだろうか。いや、中国の視聴者だって単純にエンタメとして楽しんでいるだけかもしれない。いろいろ考えた。
エンタメだからと笑って見過ごせない同性愛者の描き方
ところが今回、『VIVANT』を見ていて思ったのだ。
あれ? かつて中国について考察したことが、そのまま今の日本にも当てはまるのではないか。
日本の国力は当時に比べて弱まっている。しかし『VIVANT』では、日本の秘密組織が世界を舞台に大活躍する。かつて中国の抗日ドラマに抱いた感想が、今度は日本に返ってくる。日中の立場はこんなところでも逆転したのだろうか。しみじみしてしまう。
それとも、荒唐無稽でもスパイアクションとして楽しんでいる人が大半なのだろうか。制作側は「日本スゴイ」という物語を味わいたい空気を敏感に察知しているのかもしれない。そうしてまんまと高視聴率を獲得しているのだとしたら、「制作者スゴイ」である。
しかし、エンタメだからと笑って見過ごせない部分もあった。
同性愛者の描き方である。
シーズン2には、チョッキーという男性が登場する。タイの実業家で、情報収集やハッキングの手配に強く、堺雅人演じる乃木たちの作戦には欠かせない協力者だ。竜星涼が演じる「新庄」という男性を「新ちゃん」と呼んで慕っている。
9月13日放送の第18話では、その様子を見た二宮和也演じる「ノコル」が新庄に尋ねる。
「ゲイなのか?」
新庄が否定すると、さらに聞く。
「じゃあバイなのか?」
新庄は「いえ、ストレートです」と答える。するとノコルは「言いたいことはわかるよな」と、新庄にチョッキーの機嫌を取るよう求める。乃木も「チョッキーさんにヘソを曲げられたらおしまいです」と念を押す。
すると新庄はため息をつきながら、「了解」と答えた。このやりとりは笑いを誘うような「間」でも演出されている。
そもそも、相手の性的指向をいきなり問いただすことにもギョッとした。しかも、同性から好意を寄せられた男性が困惑すること自体が、笑いの仕掛けになっているように見える。
さらに10月4日放送の第19話では、堺雅人が別で演じる「劉」という男性が、阿部寛演じる公安の「野崎」と取り調べ室にいる。劉は野崎を慕っている。
そしてこう語る。