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ヤクルトのドラフトは本当にこれでよかったのだろうか?

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/10/28
note

 文春野球コラムに巨人の代打として2回も戦った私が、まさかヤクルトの代打に起用されるとは思いもしなかった。

 あくまでも私は「元・巨人ファン」であり、今回はアマチュア野球に詳しいライターとして「ヤクルトのドラフトについて書いてほしい」というオーダーなので、馬鹿なふりをして「えへへ〜」と書いてしまうこともできた。

 それでも、はぐれ者の私を文春野球コラムに導いてくれた、大恩あるプロ野球死亡遊戯監督のことは裏切れない。そこで死亡遊戯監督に相談すると、監督から「巨人とヤクルトで主軸を張ったラミレスのような活躍を期待しています!」と温かい激励をいただいた。誠心誠意と闘魂を込めてコラムを書かせてもらおうと思う。

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 ただし、今年のヤクルトのドラフト結果を受けて、手放しで讃えることはできない。むしろ疑問を感じることの方が多かった。

清水昇の1位指名に感じたこと

 10月25日、グランドプリンスホテル新高輪・国際館パミール。厳かな雰囲気に包まれるドラフト会議場でヤクルトの1位指名選手「清水昇(國學院大)」の名前がアナウンスされた瞬間、私は「えっ、1位?」と思ってしまった。

 根尾昂(大阪桐蔭)、上茶谷大河(東洋大)と相次いでクジに嫌われた「外れ外れ1位」。あの山田哲人だって2010年ドラフトの外れ外れ1位である。ヤクルトファンにとってはむしろ縁起がいいくらいに思えたかもしれない。しかし、私は「この順位でいいのだろうか」という疑問が拭えなかった。

ヤクルトに1位指名された国学院大・清水昇

 誤解のないよう書いておきたいのだが、私はプロ野球のスカウトの仕事に敬意の念を抱いている。各地区の担当スカウトがドラフト候補の試合から練習まで何度も視察し、技術、身体能力、性格、家族構成まで細かくチェックする。さらにスカウト部長など上司のクロスチェックを経て、チームの補強ポイントにマッチし、他球団にさらわれる前に指名できればようやく交渉権が獲得できる。サケが産卵するまでのような長く、険しい過程の末にドラフト指名に至るのだ。本来なら、指名された全選手を「おめでとう」と祝福して、それで終わりにすればいい。

 そして、國學院大の清水は素晴らしい投手だ。実は私は、ドラフト前にある野球雑誌でヤクルトへのオススメドラフト候補として清水の名前を挙げている。先発もリリーフも適性がある清水なら、きっとヤクルトの投手陣で重宝されるはずと考えたからだ。ただし、予想指名順位は「4位」にしていた。

 なぜ4位かというと、清水のようなオーソドックスな右投手はプロにたくさんいるからだ。常時140キロ台前半のストレートに、スライダーとフォークなどの変化球。先発投手としては埋没してしまうかもしれない。ただし、リリーフとして登板すると印象が一変する。150キロ前後のスピードが出て、帝京高校の先輩・山﨑康晃(DeNA)直伝のツーシームが生きる。ドラフト3~4位で獲得して、先発に中継ぎに大車輪で働いてもらう――。そんな成功イメージを抱いていた。

 ドラフト1位には、相応の役割を期待してしまうもの。清水に過度なプレッシャーをかける必要があったのか。清水を指名する時点で、スケールの大きな甲斐野央も梅津晃大(ともに東洋大)も残っていただけに首をひねってしまう。球団としては「ウェーバー順が10番目になる2位では清水は残っていない」という判断だったのだろう。

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