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「田母神論文事件」から10年 本人が語る「痛恨の記者会見と“おっぱっぴー”」

元航空幕僚長・田母神俊雄2万字インタビュー #3

2018/10/19

genre : ニュース, 政治

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僕って面白いでしょ

――ところで田母神さん、お子さんはいらっしゃるのですか?

田母神 3人。女1人、男2人です。仲いいよ。

――教育方針はありましたか?

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田母神 教育方針? 自分のことは自分でやれるようにしろ、ってことくらいです。あと、カミさんへの教育方針は「親父が家に帰ったら三つ指ついて玄関で出迎えろ」ってことだったんですが、 わかってくれませんでしたね(笑)。誰かうちのカミさんを指導してやってくれませんか。

――そうは言いながら、田母神さんは「酒と女は2ゴウまで」という持ちネタがあるそうで。

田母神 それは人を笑わせるためだけに言ってること。まじめに受け取る人がいるかもしれないですが、多くの人はなかなかいいと言って大笑いです。

 

――大吟醸がお好きなんだとか。

田母神 体にいいんですよね、大吟醸。

――そうなんですか?

田母神 聞いたことない? アセトアルデヒドができにくいんです。一般的には蒸留酒であるスコッチとか、焼酎はアセトアルデヒドができにくいと言われていて、日本酒は醸造酒だから二日酔いしやすい、酒が残りやすいと言われるでしょう。だけど日本酒の中でも大吟醸は、アセトアルデヒドのできにくさが蒸留酒以下なんだそうですよ。アセトアルデヒドを作る成分はお米の周りにあるんです。大吟醸はお米を半分以上削ってからお酒にするのでアセトアルデヒドができにくいのです。だから健康にいいの、大吟醸は。

――なるほど。

田母神 ただね、大吟醸には一つ問題がある。心臓に悪いんだよ。なぜなら値段を聞いてびっくりするから(笑)。

――できあがってますね(笑)。お好きな銘柄はあるんですか?

田母神 問題があるから控えておきます。だって、言ったら事務所にたくさん届けられてしまうでしょう。飲みきれないよ。ワッハッハ。

――インタビューをしながら思いましたが、お話がうまいですよね。

田母神 僕って面白いでしょ。

――言葉は悪いですが、お調子者な感じさえします。

田母神 いやいや、そんなこと言うけどさ……、その通りだよ(笑)。

「おっぱっぴー」までちゃんとやっときゃよかったんだ

――2008年に名古屋高裁がイラクにおける自衛隊活動の一部を「違憲」とした判決を出したことがあります。その際に、田母神さんは当時人気のあった小島よしおのフレーズ「そんなの関係ねえ」をそのまま引用して発言しちゃいましたね。石破防衛大臣が国会で「発言には違和感を覚える」と答弁するまでになったという。

田母神 防衛省の記者会見で言っちゃったんだ。あの時は本当に失敗したと思う。あんなに叩かれるんだったら、僕は「おっぱっぴー」までちゃんとやっときゃよかったんだ。

 

――防衛省の記者会見という、オフィシャルな場面でやってしまったのが何とも。

田母神 記者会見が大好きな空幕長だったから、僕は。だから記者から人気がありましたよ。防衛省の記者クラブ、忘年会と新年会をやるんだけど、いつも幕僚長クラスで呼ばれるのは僕だけなんだ。「陸幕長、海幕長、統幕長はどうしたんだ」って聞くと、「いや、呼んでも面白くありませんから、空幕長だけ」って。

――呼ばれること自体、珍しいんじゃないですか。

田母神 珍しいことなの。

――官僚は口が固いものなのに、変わっていますよね。

田母神 通常、金曜日の15時から記者会見だったんです。で、水曜日くらいから色々準備して部下が「このように喋ってください」って資料を持ってきたり、ブリーフィングをしてくれるわけ。でも僕は「いらない。自分で喋る」って。

――中立性が求められる仕事ですからね。部下の方は心配だったでしょう。

田母神 記者会見でも、記者から質問がないと残念でさ。「あなた、質問ないのか」って会見で質問を強要する初めての幕僚長だったそうです。本当に記者会見は好きだったな。大好き。

「記者会見、大好き。」

牧伸二のウクレレ漫談が好き

――その話術は一体どこで身についたんでしょうか。

田母神 どうだろうなあ、昔から僕は笑いが好きだったからね。落語もよく聴いていたし、寄席にも通いましたよ。学生の頃、一番よく観に行ったのは東急文化寄席っていうやつ。

――寄席に通っていたんですか。

田母神 牧伸二のウクレレ漫談。「あーあ、やんなっちゃった、あーあ、驚いた」。ああいうの好きだった。

――それが自衛官辞任後の「講演活動」にも役立ったといえば、話をつなげすぎでしょうか。

田母神 いや、そういうこともあるんだと思いますよ。まあ、クビになった直後は決まっていた再就職先もパーになって、「ああ、困ったな俺」って思っていたんだけど、途端に講演依頼がどんどん舞い込んできて、なんだかんだ言ってクビになってよかったと思うくらいだった。実入りもまあ、よかったし(笑)。

――幹部自衛官として、非常に順調な出世をして航空自衛隊トップの空幕長まで上り詰めた矢先、論文事件でまさかの辞任。振り返ってみて、ご自身の人生、どういうふうに思っていますか?

田母神 それはまさか、こういう人生になるとは思わなかったですよ。だって、本も今までで、68冊出してるんですよ。自分でも驚くね。こんな人生になるとは自衛官時代には全く思わなかったけれども、まあ、これが私の人生なんだな。

 

写真=白澤正/文藝春秋

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