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連載池上さんに聞いてみた。

池上彰氏「新潮45」が廃刊ではなく休刊と発表した理由

池上彰氏「新潮45」が廃刊ではなく休刊と発表した理由

池上さんに聞いてみた。

2018/10/23
note

Q 雑誌の休刊と廃刊に違いはありますか?

 新潮社の「新潮45」が休刊を発表しました。「なぜ廃刊しないのか」というインターネット上の書き込みをよく見ますが、雑誌の休刊と廃刊に違いはありますか? また、池上さんは今回の休刊をどう思いますか?(10代・男性・高校生)

A 出版界では、事実上の廃刊でも、とりあえずは休刊と発表するのが慣例になっているからです。

 今回の「休刊」の発表に際して、取材に詰め掛けた新聞やテレビの記者たちが、「どうして廃刊でなくて休刊なのだ」と問い質したそうですが、出版界の実情を知らない反応でしたね。出版界では、事実上の廃刊でも、とりあえずは休刊と発表するのが慣例になっているからです。

 というのも、雑誌は、「雑誌コード」という5桁の番号が雑誌ごとに割り振られていて、廃刊になると、返上しなければならないという事情があるからです。でも休刊にしておけば、共通雑誌コード管理センターで2年間保管されます。その間に復刊しなければ、別の雑誌に使われます(出版科学研究所の説明による)。逆に言えば、2年間は復刊できるチャンスがあるのです。

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 たとえば「新潮45」を廃刊にしてしまえば、それっきりですが、休刊にして雑誌コードを保有しておけば、2年以内に「新潮65」などに誌名を変更して復刊することが可能だからです。

©iStock.com

 雑誌が売れなくなったことで、ノンフィクションの発表場所が少なくなっています。「新潮45」は、ノンフィクション作家の発表媒体として貴重な役割を果たしてきただけに、「休刊」それ自体は残念です。

 雑誌に掲載された論考に批判が集まったからといって安易に休刊に踏み切ったことも、メディアのあり方として再考の余地があります。掲載した論考や編集方針に批判・非難が集まったのなら、それを考える場を提供し、編集部の考えを明らかにして休刊に踏み切るという方法があったのではないかと思います。

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