優れた医師「10の条件」
1、病気で苦しい思いをしている患者さんに寄り添う心を持っている。
2、都会に限らず、どこに赴任しても地域社会に貢献する気持ちを持っている。
3、患者を救える確かな診断能力と医療技術を持っている。
4、患者を救うために、一生勉強して技術を磨き、研究する努力を惜しまない。
5、自分の功名心や金儲けのために、無謀な治療や過剰な治療はしない。
6、データの改ざんや結論の捻じ曲げなど研究不正は絶対にしない。
7、医師以外の医療スタッフにも敬意を払い、協調して仕事をすることができる。
8、自分ができないことは、他の専門医やスタッフに協力を請う謙虚さを持っている。
9、思い込みを排し、自分と反対の意見にも耳を傾ける謙虚さを持っている。
10、医療事故などがあったときに、事実を話せる正直な心と勇気を持っている。
いかがでしょうか。異論もあるかもしれませんが、私はこのような医師になっていただきたいと願っています。
「最難関だから」という理由で医学部を受験
どのような医師像を求めるにせよ、まず各大学は医学部を志望する人たちに、「こんな人に医学部に来てほしい」と受験要項に明確なメッセージを書き、それに同意する人たちだけに受験資格を与えるべきだと思うのです。
なぜ、わざわざこんなことを書くかというと、私は有名進学校で成績上位の人たちが、こぞって医学部を狙う風潮を危惧しているからです。拙著『医学部』(文春新書)にも書きましたが、有名進学校では「頭のいい奴は医学部を狙う」という空気があるそうです。なぜなら、東京大学理科3類(医学部医学科に進学するコース)や京都大学医学部を頂点に、医学部の偏差値が他学部に比べて抜きん出て高いからです。また、医学部に入れば「食いっぱぐれがない」という理由で医学部を目指す人もいると聞きます。
しかし、「世界一高い山だからエベレスト(チョモランマ)に挑戦する」「医師になれば将来安泰」といった感覚で医学部に入られても、患者側としては困ります。なぜなら、受験偏差値が高かったとしても、それだけでは老若男女、さまざまな患者やスタッフに相対しなければならない現実の医療現場では、通用しないことも多いからです。
確かに医師の仕事をこなすためには、大量の医学的知識や技術を詰め込む必要があります。さらに、最新の研究成果を身に着け、みずから発信するには統計学をマスターし、英語の論文を読み書きする能力も求められます。ですから、現在、医学部で行われているような、幅広い科目で総合的な能力を問う学力試験は不可欠でしょう。
しかし、それだけでなく、その中から「医師になる」という自覚と覚悟をきちんと持っている人を選び出すことが、なにより重要だと思うのです。そのためには、学力試験をクリアした人を対象に実施されている面接や小論文などの試験を、もっと充実させるべきだと私は思います。ほとんどの医学部入試で面接や小論文が行われていますが、現在のような簡単なものでは、人物像を見抜くことは簡単ではないでしょう。なぜなら多くの受験生が医学部専門の予備校などで、面接や小論文の対策もしてくるからです。