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14年前、誰が「自己責任論」を言い始めたのか?

「イラク3邦人人質」記事を読み直す

2018/11/02

genre : ニュース, 政治

環境相時代の小池百合子氏が言ったこと

 事件勃発を伝える4月9日にさっそくある政治家のコメントが載っていた。

「危険地域、自己責任も 小池環境相」(読売新聞 夕刊)

 現・東京都知事の小池百合子氏である。

《小池環境相は「(三人は)無謀ではないか。一般的に危ないと言われている所にあえて行くのは自分自身の責任の部分が多い」と指摘した》

 とある。

小池百合子氏 ©︎文藝春秋

 この頃の読売、朝日、毎日を読み直すと、政治家で「自己責任」を言って記事に載っているのは小池発言が最初だ。この11日後の4月20日に朝日新聞は「自己責任とは」という特集記事を書いているが、ここでも時系列の表で一番最初に載っているのが小池氏の発言である。

 つまり新聞を見る限り、政治家として最初に被害者の「自己責任」に火をつけたのは小池氏だった可能性が高い。

「帰国して、頭を冷やしてよく考えて判断されることだと思います」

 ほかの政治家はどうか。

 読売新聞・夕刊(4月16日)の一面トップは「3邦人 あすにも帰国」とある。しかしそのすぐ横は「閣僚から苦言続々」という記事だった。

 「自己責任という言葉はきついかも知れないが、そういうことも考えて行動しないといけない。」(河村建夫文部科学相)

 「どうぞご自由に行ってください。しかし万が一の時には自分で責任を負ってくださいということだ」(中川昭一経済産業相)

  このほか《「損害賠償を三人に求めるくらいのことがあっていい」との声も》という記載もあった。

 毎日新聞の「『身勝手』か『不屈の志か』」(2004年4月17日)も、解放直後の4月16日の政治家の発言をまとめている。

「帰国して、頭を冷やしてよく考えて判断されることだと思います」(福田康夫官房長官)

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福田康夫官房長官 ©︎AFLO

 「自己責任をはっきり打ち出してもらいたい。なぜ(3人の出国のために)チャーター機を出したのか。1人は『イラクに残りたい』と言っている。こういう認識には問題がある」(山東昭子元科学技術庁長官)

 「救出に大変なカネがかかったが、誰も把握していない。7日間徹夜の努力をしており、(額を)国民の前に明らかにすべきだ」(公明党・冬柴鉄三幹事長)

同じ4月16日、井上喜一防災担当相は《家族はまず「迷惑をかけて申し訳なかった」と言うべきで、自衛隊撤退が先に来るのはどうか》と発言している(朝日新聞 2004年4月20日)。