雑な政治手法は反感も生んだ
本稿の執筆時点では、進次郎の国会改革は「うねりになった」と本人が新聞で強調するほどの状況には至っていない。
思惑通りにならない原因は、二つある。
一つは、「平成のうちに」と、実現性にこだわるあまり、進次郎の肝煎りだったはずの行政監視機能強化策がぼやけたからだ。「国民の政治不信」を議論の出発点としながら、あらゆる責任追及から逃げる政権との直球勝負を避けた。
これでは、国民の期待に応えられない。
二つ目は、「超党派」を謳いながら、野党の改革派を敵に回したことだ。第1回の会合こそ、100人以上の議員が集ったが、最大野党の立憲民主党が与党主導の運営に反発して離脱。設立3週間後に衆院議長へ提言書を渡す際には、国民民主党が国会戦略を理由に土壇場で欠席。「国民的合意」とは名ばかりになってしまった。
進次郎は「全議員に呼びかけた」と強調したが、調べてみると、実際には言葉を尽くして参加を募ったわけではない。4回生の雑な政治手法は野党だけでなく、自民党のベテランからの反感も生んだ。
かつて父・純一郎は一連の構造改革を巡り、今の安倍一強体制よりも強靱だった旧田中派に対峙し、微塵も妥協せずに「豪速球」を投げ続けた。一方、国対政治や派閥抗争で鍛えた若き日の経験を生かし、敵対勢力をも融通無碍に取り込むことで圧倒的民意を担保した。そして不可能と言われた改革を合意に導いた。
無論、旧態依然とした国会を平成末期の生活感覚と技術に合った形に変えることに抵抗する国民は少数派だろう。小泉進次郎が「永田町の常識」を超越した国民目線の改革姿勢を貫き、口うるさい野党とも手を取り合えば、国会改革は大きく動き出すはずだ。それは、彼自身が「天才子役」から「国民的指導者」に脱皮を図るための必須条件でもある。(敬称略)
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