「スポーツには事故というリスクがある」
その後、高校に復学し、大学にも進学した。しかし、キャンパスにはエレベーターがない古い校舎もあり、受講できない講義があった。また、学生がボランティアで授業のサポートをしてくれていたが、周平さんは「サポートのために講義を休む学生がいたことを知って、『おれ、なんで大学にきているんだ?』と思った。学生の自主性に任せることに限界がある」と感じ、大学との話し合いの結果、「障害学生支援室」ができたという。
こうした苦労はあったものの、周平さんはラグビーをしたことを後悔はしていない。
「スポーツには事故というリスクがある。自分がけがをするとは思っていなかったが、誰にでも起こりうる出来事。縁遠いものではない。事故を起こさないことがベストだが、事故後のことについても関心を持ってほしい」(同)
現在では、ラグビー事故勉強会を定期的に開いている。
「時間が経つ中で、指導者の先生も苦しんでいたのではないかと思った。チームメイトもしんどかったのではないか。正解も、不正解もない。事故後はどんなことが巡ってくるのか。原因究明や補償問題もあるが、社会参加も重要だ」(同)
指導者を目指す学生たちには、事故だけでなく、その後の生活にも関心を持ってほしいと訴えた。
バスケ部では顧問による体罰が常態化していた
2012年12月23日にキャプテンが自殺した大阪市立桜宮高校のバスケットボール部のOB、谷豪紀さんも登壇した。
調査によって、バスケ部では顧問による体罰が常態化していたことが明らかにされた。自殺前夜には、顧問はキャプテンを30~40回、殴っていた。体罰をともなう指導死だったのだ。結局、顧問だった男性教諭は懲戒免職。2013年9月、大阪地裁(小野寺健太裁判長)は元顧問に懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を下した。また、2016年2月、東京地裁(岩井伸晃裁判長)は、体罰と自殺の因果関係を認め、大阪市に対して、7500万円の損害賠償を命じた。
亡くなったキャプテンの2年先輩だった谷さんは、部活への思いについてブログで書き綴っていた。それが指導死の遺族の目に止まり、シンポジウムに参加したり、講演活動をするようになった。遺族にも会うことができたが、感謝されているという。
「こうしたことがあると、『なぜ逃げないのか?』『自殺した人の人格が弱いのではないか?』と言われる。果たして、本当にそうなのか」
そう問いかける形で、まず当時の学校の体質から話し始めた。
「この学校には体育科がある。スポーツ強豪校だが、陰湿な雰囲気があり、普通科と体育科の先生のパワーバランスがいびつだった。バスケ部は、学校のいびつさを凝縮させたような部活だった」