日大アメフト部の「危険タックル問題」に端を発して、日本レスリング協会、日本プロボクシング協会といった競技団体、そして日大水泳部、日体大駅伝部など、大学スポーツの現場でパワハラをめぐる話題が続いている。
3年前から「重大事件・事故から学ぶ研修会」
スポーツ指導者のあり方が問われる中、日本体育大学は世田谷キャンパスで3年前から 「学校・部活動における重大事件・事故から学ぶ研修会」を開いている。今年も10月から12月まで3回にわたり開かれる予定だ。
残念ながら学校生活や部活動では生死にかかわるスポーツ事故が起きたり、体罰を含む不適切な指導が行われたりすることがある。不適切な指導の結果、生徒が自殺することもある。そうした被害者、遺族の話を学生が聞くことで、安全意識を高め、再発防止へと繋げることが同研修会の狙いだ。大学としても組織的に取り組みを始めるため、2018年4月、「スポーツ危機管理研究所」を設置した。
「自分の命を差し出して、助けてほしいと思いました」
10月12日の研修会には、駅伝練習中に倒れた小学生6年生の桐田明日香さん(当時11歳)の母、寿子さんが登壇した。
2011年9月、さいたま市内の小学校で6年生の明日香さんが駅伝の課外練習中に倒れ、死亡した。明日香さんが倒れた直後、けいれんや、ゆっくりとあえぐような呼吸(死戦期呼吸)があった。そのため、教師たちは、保健室に搬送後に、救急出動を要請している。しかし、明日香さんの心臓が止まっているとは考えず、心肺蘇生をせず、校内にあるAEDを使わなかったことが検証で明らかになった。
「(娘が亡くなるのは)受け入れられない辛い現実。もし、叶うのなら、等価交換。つまり、自分の命を差し出して、助けてほしいと思いました」
この事故を踏まえ、さいたま市教委は遺族と話し合い、専門家の協力を得て、「さいたま市立小学校児童事故対応検証委員会」で検証を進めた。2012年2月に、「検証委員会報告」を作成。「さいたま市立小学校児童生徒事故等危機管理対応マニュアル作成指針」を作った。また、教委内に「体育活動時等における事故対応マニュアル作成プロジェクトチーム」を設置して、作業を進めた。それに基づいて、「体育活動時等における事故対応テキスト~ASUKAモデル~」を作成した。
寿子さんは次第に、「一人でも多くの命を救いたい」と思うようになり、事故分析作業を進めなければならないと考えるようになった。
「人が倒れたときに、そばにいる人が何をするのかが大切だと思います」