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年間約3000人が失明する原因

 次に起こるのが「糖尿病網膜症」と呼ばれる眼の障害です。光や色を感知する眼のフィルムにあたる「網膜」が、毛細血管の詰まりや出血によってダメージを受けてしまいます。糖尿病を発症して、だいたい10年前後で起こると言われていますが、実は中高年の失明原因の2位がこの糖尿病網膜症です(1位は緑内障)。これによって毎年約3000人が中途失明をしているそうです。

 3つ目、10~15年後に起こるのが「糖尿病腎症」です。高血糖状態が続くと、腎臓の濾過装置にあたる「糸球体」の毛細血管が傷ついたり硬くなったりして、老廃物を尿として排出しにくくなり、血液をきれいにすることができなくなります。放置していると老廃物がたまって命に危険が出るので、「人工透析」を受けなければならなくなります。

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 専用の装置をつかって血液を体内から抜き取り、老廃物を除去して体に戻す人工透析は、週に2、3日、1回に3~4時間かかります。食事制限や水分調節も必要なため、日常生活の一部が制限されてしまいます。糖尿病によって、毎年2000人ほどの人が新たに人工透析を余儀なくされています。

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認知症は脳の糖尿病?

 この3大合併症だけでも怖いのですが、糖尿病になると毛細血管が傷つくだけでなく、太い血管も動脈硬化が進むので、他にも様々な病気のリスクが上がります。

 代表的なのが、血管が詰まっておこる「心筋梗塞」と「脳梗塞」です。日本糖尿病学会の「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013」によると、糖尿病の人の冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)の頻度は、糖尿病でない人の2~4倍、脳血管疾患(脳梗塞や脳出血)も約4倍に上昇するとあります。

 それだけではありません。糖尿病はさまざまな重大な病気と関係しています。まずは「認知症」です。糖尿病の人はアルツハイマー病のリスクが1・5倍に上がるというデータがあります。糖尿病は脳梗塞も起こしやすくなるので、脳血管性の認知症のリスクも当然上がります。研究者の中には、「認知症は脳の糖尿病だ」という人もいるほどです。