うつ病、がん、骨粗しょう症…糖尿病は万病の元
また、意外かもしれませんが、糖尿病の人は「うつ病」になりやすいことも知られています。なぜうつ病と関係しているのか、詳しくは解明されていませんが、糖尿病が進むと食事制限やインスリン(血糖値をコントロールするホルモン)の自己注射といった治療を続ける必要も出てきます。それがストレスになって、うつ病になりやすいとも言われています。
さらに、糖尿病になると「がん」のリスクも1・2倍ほど上がります。とくにリスクの高いのが「大腸がん」「肝がん」「膵がん」です。血糖値が高い状態が続いて、血中のインスリン濃度が高くなるために、がんになりやすくなると考えられていますが、詳しい理由は不明です。いずれにせと、糖尿病患者はがんにもなりやすいので、「まめにがんの検査もするべきだ」という専門医もいます。
その他に、「骨粗鬆症」や「歯周病」との関連も言われていますし、抵抗力が落ちるのでインフルエンザなどの感染症や肺炎などにもかかりやすくなり、手術でも合併症を起こすリスクが高くなります。つまり、多くの病気や治療で「ハイリスク群」に分類されてしまうのです。
いかがでしょうか。いかに糖尿病がやっかいな病気かご理解いただけたのではないでしょうか。あまりにいろんな病気と関係しているので、私も記事を書くときによく「糖尿病は万病の元」と書いてきました。まさに、その通りだと思うのです。
糖尿病にならないためには
糖尿病にならないためには、暴飲暴食を避けて太らないよう心がけるとともに、よく体を動かして、血糖をもっとも消費する筋肉の量を維持すること(とくに全体の7割と言われる下半身の筋肉)が大事です。
以前、百寿者(100歳を超えた長寿の人)の研究者を取材したこともありますが、長寿を達成している人はみんな、糖尿病になったことがなかったそうです。糖尿病は老化を進めるとも言われていますし、糖尿病にならなかったからこそ、大きな病気をせずに長生きできたのでしょう。
多くの人が糖尿病の予防・改善に努めれば、健康寿命(医療や介護の世話にならずに長生きできる期間のこと)も伸びると考えられます。体質的に糖尿病になりやすい人もいますが、生活習慣に気をつければ予防・改善することができ、他の多くの病気の予防にもつながります。世界糖尿病デーのきょう、みなさんにも関心を持っていただければ幸いです。
参考)国立国際医療研究センター「糖尿病情報センター」http://dmic.ncgm.go.jp/
糖尿病ネットワークhttp://www.dm-net.co.jp/ など