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定評のある医師にセカンドオピニオンを求めるべき

 しかし、現在は効率的な抗がん剤の使い方も確立され、1990年代後半以降は吐き気や発熱などの副作用を抑える薬も多数開発されている。知識と経験のある医師の処方に従えば、昔のような苦しみは経験しなくて済むという。

 その証拠に、渡辺医師が院長を務める浜松オンコロジーセンターには入院設備はない。外来だけでがんの化学療法やホルモン療法を実施し、患者は自宅から通院してくるのだ。

 もう一つ、術前化学療法には、術後に使う抗がん剤やホルモン剤への反応性を見る――という目的もある。前述のように、乳がんはサブタイプごとに効果的な治療が選べるのだが、術前化学療法をしないと、それを手術のあとで考えなければならなくなる。

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「『今なら乳房を温存できるからすぐに切るべき』と手術を急がせる医師には要注意。そんな時こそ患者の側が落ち着いて、腫瘍内科や乳がん治療で定評のある医師にセカンドオピニオンを求めるべきなのです」(渡辺医師)

 術前化学療法というアプローチがあることすら患者に告げずに手術をする医師もいる。術後に化学療法の必要性を説かれて恐くなり、渡辺医師のクリニックにセカンドオピニオンを求めてくる患者は少なくないという。

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 乳がんの中には、分子標的薬やホルモン療法などを使った内科的なアプローチだけでコントロールできるケースもあり、必ずしも手術が必須という時代ではなくなってきている、と渡辺医師は言う。

 手術の前にできること(すべきこと)はないのか――を確認することは、これからの時代、乳がんと宣告された患者がまずすべきことなのかもしれない。

大元には「理不尽な日本人特殊論」がある

 こうした誤解の大元には、古くから日本の医療界に根付く「理不尽な日本人特殊論」がある、と渡辺医師は指摘する。その考えの根底には、日本人の体格の小ささがあるようだが、欧米人との体格の差は昔と比べてだいぶ縮まっている。そもそも前述のとおり、抗がん剤の使用量は体表面積に対して算出される上、肝機能など患者ごとの体質も考慮するので、「体の大きさだけを元にがんの内科的治療を排除することに正当性はない」と渡辺医師は主張する。

 がんという、命に関わる病気を目の前にした時、「手術だけ」とか「化学療法だけ」と決めてかかる必要はない。どの治療法も進化し続けているのは事実だ。あわてて一つの治療に飛びつくのは得策ではない。あとで後悔しないためにも、患者自身が知識を身に付けて、(時には複数の)医師とよくディスカッションした上で治療計画を立てるべきだろう。