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「ピンポンはやめよう」安倍首相とプーチンの言葉から北方領土交渉の進展を探る

安倍首相「22回首脳会談を重ねてきたが、プーチンの主張は変わらない」

2018/11/17

安倍首相を「主権」で牽制するプーチン

ウラジミール・プーチン ロシア大統領
「どのような基準が設けられて、どちらの主権になるのかが記されていない」

毎日新聞 11月15日

©共同通信社

 プーチン大統領は15日、シンガポールで会見し、日ソ共同宣言を基礎に置いて平和条約交渉を加速化させると一致したことに関連し、歯舞群島と色丹島の2島の引き渡しについて、「どちらの主権になるのかが記されていない」と述べた。2島の引き渡しも既定路線ではないと日本側を牽制している。

 対日関係に詳しいロシア科学アカデミー極東研究所のビクトル・クジミンコフ氏は、この発言について「引き渡しはプーチン氏にとって主権の引き渡しを意味していない」と解説し、日本側の今後の交渉は難航するだろうという見方を示している(時事ドットコムニュース 11月15日)。菅義偉官房長官はプーチン氏の発言を受けて、「返還されることになれば当然、日本の主権も確認される」と語った(時事ドットコムニュース 11月16日)。

ロシアが考える領土問題の「引き分け」

ウラジミール・プーチン ロシア大統領
「我々は妥協が必要だ。つまり『引き分け』のようなものだ」

日本経済新聞電子版 2016年1月15日

安倍晋三 首相
「ウラジミール(プーチン)、あなたは以前に『引き分け』と話したはずだ。解決に向けて柔軟に努力しよう」

日本経済新聞電子版 2016年1月15日

 少し時間を遡ってみる。安倍首相の言葉は2015年11月にトルコで開かれた日ロ首脳会談でのもの。「引き分け」とは2012年3月に行われた記者会見でプーチン氏が北方領土問題について語った「我々は妥協が必要だ。つまり『引き分け』のようなものだ」という言葉を元にしている。なお、安倍首相の交渉の誘いに対して柔道黒帯のプーチン氏は「1本とりにきたようだね。まずはロシアの地方で会うのはどうだろうか」とかわした。

 プーチン氏が言う「引き分け」とは2島返還のことだろう。だが、プーチン氏はこのとき「日ソ共同宣言には平和条約締結後にソ連が日本に2島を引き渡すと書かれている。つまり平和条約を結んだ後はいかなる領土要求も残らないということだ」と語っている。また、「どのような条件で引き渡されるか、どの国の主権の下に置かれるかは書かれていない」とも指摘していた。

©iStock.com

 つまり、言っていることは現在とまったく変わっていない。歯舞・色丹は引き渡すが、国後・択捉は返還しない。歯舞・色丹については、日本の主権を認める「返還」ではなく、2島が利用できるだけの「引き渡し」ということだ。プーチン氏が言う「妥協」とは、北方4島の帰属を解決して平和条約を結ぶという基本姿勢を崩さずにいる日本側に突きつけたものだ。