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どこから光を当てて理解しようとするか

 そのしわ寄せは、人を雇う側ではなく、雇われる側、とりわけ外国からやってくる、日本語もまだおぼつかない人たちに仕事を奪われる可能性のある単純労働の日本人であることは、よく考えたほうがいいと思うのです。すなわち、運送会社で物流を担ったり、コンビニエンスストアで応対したり、居酒屋などで客に見えない厨房で働く仕事を担うのが、安い給料で働く外国人に置き換わる。あるいは、漁村で養殖の仕事をしたり、介護の現場で日本人の老人の世話をしたり、酒屋や旅館で頑張るのは外国人がメインになったとき、果たして彼らは本当に日本社会に好意を持ち、溶け込んでくれるのでしょうか。

「そういう外国人が安く雇えるから」と、置き換えの対象とされるのはスキルを持たない日本人である以上、確かに最低賃金が云々といってもなかなか給料は上げてもらえなくなるでしょう。まさに藤田孝典さんが「時給を1,200円に」という話をしているのも、田端信太郎さんが「そういう仕事が嫌ならば他の仕事を探せばいい」と喝破するのも、同じ現実が抱える問題に対してどこから光を当てて理解しようとするかという状況に他なりません。

官邸HPより

 そして、その最低賃金が引き上げられ時給1,200円が実現したのだとしても、それはサラリーマンで言うならば額面21万円に過ぎません。社会保険料などもろもろ引かれて17万ちょっとの手取りで、結婚し、子どもを儲け、育み、自らの老後に備えようという気持ちになれるのか、というのは、政策に携わる人はもちろん、いまを生きる現代日本人全員がよく考えていくべきことなんじゃないかと思うわけです。

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ゴーン会長逮捕に怒りたくなるのは庶民感情なのですが

 そりゃ日産ゴーン会長が50億円も所得を過少申告してました、と言われれば「なんだその金額は」と怒りたくなるのが庶民感情なのですが、実際には日本社会の経済的な没落を受け入れるためにも日産が経験したような大胆な改革が必要であったことを考えれば、怒る先はどこにあるのか、あるいはどう怒るべきなのかはもうちょっと冷静に考えたほうがいいんじゃないかとすら思います。

「優れたリーダーにこれだけのお金を払って、こういう利益が出ました」と言える社会にしたいですし、我々はデフレから脱却したかったのに何で安く働いてくれる外国人を大量に入れてるんだ? という話も含めて、議論のできる余地はたくさんあると感じます。田端信太郎さんと藤田孝典さんの議論は、本当はもっともっと、掘り下げられるもののはずなんですがねえ。