11月30日に行われた契約更改では4億円でサインし、その席上、メジャー行きの夢を語ったDeNAベイスターズの筒香嘉智。誰もが認める球界のスーパースターに成長したが、開花するまでには苦難の道のりがあった。入団当初、悩んでいたのは1軍と2軍でのコーチの異なる指導。筒香本人が赤裸々に語る問題点とは――。自身初めての著書『空に向かってかっ飛ばせ!未来のアスリートたちへ』から一部を紹介する。
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1軍と2軍でまったく違う指導に悩む
2年目のシーズンも、開幕は2軍で迎えました。この年は2軍監督が田代監督から白井一幸監督に替わったのですが、白井監督の独特のスイング練習が合わずに、右手首の靭帯を痛めて5月から3か月ほど試合に出られない期間が続きました。
それでも戦列に復帰すると、ファームではホームランも順調に出て、バッティングの調子は悪くなく、8月に2度目の1軍昇格を果たすことになりました。
プロ入りしてから僕が一番、悩んだのは2軍でコーチとコミュニケーションをとって練習していても、1軍に行くとまったく違うことをさせられることがしばしばあったことでした。
ケガから復帰すると、ファームの白井監督からは「自分のポイントに引きつけて強く振れ」と言われて練習を続けてきました。たまに試合で体が前に出て振ってしまうと「泳いでいるのでしっかり引き付けろ」と注意を受けていました。ところが、1軍に上がるとまったく逆のことを言われてしまうのです。
「もっと前で打て、前で!」
1軍に上がった途端に、あるコーチからはこう言われました。
前でさばいて飛ばせ、ということで、2軍で白井監督から言われた「しっかり引き付けろ」とはまったく逆の打ち方です。
しかも、こう言われたのが1軍に上がって初めての練習で、まだ試合にも出ていない段階でした。実戦を何も見ていないのに、そういう風に言われる。「エッ、もう言われるのか……」
戸惑いばかりが心の中を渦巻きます。