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内田春菊「人工肛門(ストーマ)をつけた私と普通の生活」

内田春菊インタビュー #1

2018/12/13
note

お酒を飲まなくても十分楽しい

──どんなことが大変でしたか?

内田 気分が落ち込んだ時もそうですが、お酒を飲みすぎた後は特に、お腹を壊したりその後便秘が続いたりしてプレートがはがれてしまうことが多くて。家だといいんですが、外出先でパウチの中身を捨てたり交換したりする回数が増えると大変なんですよ。スコッチケーキを食べて顔が真っ赤になる母親の遺伝子を受け継いだのか、もともとそんなにアルコールに強いわけではなかったので、お酒はやめようと一切飲まなくなりました。

 

──禁酒は医師からもすすめられたのですか?

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内田 主治医の山田先生もお酒好きなので、それはひと言もおっしゃらなかったですね。「がんと言われただけでへこむのに、このうえさらに禁酒しろなんて言えない」と。でもね、不思議なものでお酒をやめてもうすぐ2年になりますけど、今ではもう、お酒を飲んでいる自分を想像するだけで、なんかだるくなるんですよ。お酒を飲まなくても十分楽しいですしね。

 

──まだ検査などは定期的に通われていますか?

内田 今年の夏、お尻の傷の内側にCTでは何だかわからない影があると言われて、MRIだと3カ月待ちになってしまうため、PET検査を受けてくださいと言われました。山田先生に「それ、すごい高いやつですよね」って聞いたら、「3万円くらいだけど、印税入ったんですよね」と言われて「はい」と……(笑)。医師の診断で行ったので2万8千円でしたが、自分で「どこか悪いところがあるか調べたい」と行くと13万円かかると聞きました。

──13万円! そんなに……。

内田 それでも安くて、有名な病院だと20万円くらいするところもあると言われました。「PET検査が高い」というのは、おそらくそういうところから来ているのではないかと思います。次は12月に血液検査の予定ですが、PET検査のおかげでがん細胞がどこにもないことが分かったので、しばらくは安心して過ごせます。

 

うちだ・しゅんぎく/1959年長崎県生まれ。84年4コマ漫画でデビュー。93年発表の小説『ファザーファッカー』と94年刊の漫画『私たちは繁殖している』でBunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。『南くんの恋人』『お前の母ちゃんBitch!』『おやこレシピ』など作品多数。『がんまんが』と続編の『すとまんが』で自身のがんやストーマ体験の経緯を描いている。最新刊は『ダンシング・マザー』。

ダンシング・マザー

内田 春菊(著)

文藝春秋
2018年11月22日 発売

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