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ジャック・マーが繰り出した「国民お年玉」

 2015年2月18日、旧暦大みそかにあたるこの日、アリババグループの創業者である馬雲(ジャック・マー)が繰り出したのが国民お年玉。なんとアリペイユーザーに99万9999件のお年玉を配るというものだ。中身は日本円にして約0.1円から8万円前後までばらばら。もらった金額によって、運が良かった悪かったとその後もネタにできるのが楽しく、大きなインパクトを残した。

「アリペイ」のスマホ画面

 同じく2015年の旧正月にアリペイのライバルであるウィーチャットペイが展開した旧正月キャンペーンが「テレビお年玉」。中国版紅白歌合戦と呼ばれる人気番組「春晩」とのタイアップ企画で、テレビに合図が出たタイミングで、ウィーチャットペイを開いたスマートフォンをシェイクすると、お年玉がもらえるという仕組みだ。なんと1分間のべ8億1000万回ものシェイクがあったという。

 こういう巨大キャンペーン以外にも、「1週間連続使用でキャッシュバック」「**の新商品でキャッシュバック」「新機能を使うとキャッシュバック」と、細かいキャンペーンも繰り返されている。昨年には海外での利用促進に「対象店舗の支払い額を全額キャッシュバック」というキャンペーンもあり、秋葉原のファーストフード店で、中国人がいきなり大行列を作ったこともあった。

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中国の生鮮品市場。写真左上にQR決済用のボードが見える
成田空港、アリペイの広告看板。日本でもサービスが広がっている

アリペイのばらまきは1000億円?

 事業者向けのキャンペーンも強力だ。アリペイは春雨計画という事業者支援計画を発表。PayPayの事業者向け1%還元とよく似たキャンペーンで、加盟店舗や代理店に対し、決済金額に応じてお金を支給するという仕組みだ。2016年からの3年間で10億元(約165億円)をばらまくと発表されている。

「アリペイ」を運営するアントフィナンシャル

 ユーザー向け、事業者向けのキャンペーンで投じた金額は合計いくらになるのか、アリペイは発表していないが、その金額は数百億円、あるいは1000億円を超えると、ある中国決済企業の専門家は推測している。

 中国語では赤字必至のユーザー獲得キャンペーンを「焼銭大戦」と呼ぶ。PayPayの100億円はすさまじい金額ではあるが、中国流を貫くPayPayは今後も次々と焼銭キャンペーンをくり広げるのではないか。LINE、楽天、ドコモなどの競合他社も対抗して焼銭を始めるのか。QRコード決済戦争の熱い戦いはまだ始まったばかりだ。

写真=高口康太