十年一昔という言葉があるが、最近の中国はもはや「10ヶ月一昔」。ヘタをすれば「10週間一昔」というスピードで変化が進んでいる。昨年、日本でも話題になったシェアサイクルのブームはすでに沈静化した。同じく昨年秋に現地を訪れた20代のライターが「負けたのだ、日本が」と感想を記した広東省の深圳も、日本国内での注目度は若干下がった感がある。
この、動きが早すぎる2018年の中国IT関連の動向について、12月9日のイベント「B級中国 vs. S級中国」の開催を控える中国ライターの安田峰俊氏とアジアITライターの山谷剛史氏に、存分に振り返ってもらった。(全2回の1回目/#2へ続く)
なお、興味のある方は昨年に本サイトでおこなったお二人の対談記事(その1、その2)もご覧いただきたい。
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地方のウェーイ高校生が中華アプリを使いだした!
安田 個人的に2018年の印象を言うと、中国のITサービスが日本の一般人の間で抵抗感なく受け入れられるようになった「元年」みたいな感じがあります。動画アプリのTikTokとか、画像加工アプリのMeitu、ゲームの『荒野行動』あたりが代表的です。
山谷 ですね。もちろんこれまでも、一部の日本人はチャットアプリのQQとか微信(ウィー・チャット)を使っていたし、中華ゲームも陰陽師とかミラクルニキなんかはあった。ただ、「中国と仕事で関わる人」や「ゲームマニア」以外の一般の日本人が、中国製であることを意識しないでたくさん使うようになったのは、確かに2018年が「元年」と呼べるかもしれない。
安田 地方のウェーイな高校生が変なEDMに合わせて踊る動画を中国のアプリにアップロードする行為がブームになるとか、10年前の北京五輪の時代の感覚では信じがたいですよ。
あと実は私、今年は個人的にも中国企業の生活への浸透を感じる事件がありました。田舎の母(62)がついにガラケーを卒業してスマホを買ったんです。ちなみに母は、メールの添付ファイルの送り方もUSBメモリーの使い方も知らない、典型的な地方のサイバー弱者の年配層です。
山谷 ガラケー卒業か……。中国だと、フィーチャーフォン(ガラケー)が2Gばかりで面倒なので、電話は全員スマートフォンを持てとばかりに、いよいよ2Gを止めようという動きが出ています。上から強制する形で市民に新しいものを使わせるあたり、実に中国的です。
話はもどって、滋賀県にいる安田さんのお母さんがスマホを買った。で、それが中華メーカー製だったという話ですか?
安田 そうなんです。2005年ごろまで頑なに携帯を持たず、その後は京セラのガラケーを長年使い続けてきた母が、近所のおばちゃんのオススメでファーウェイのスマホを使いはじめた。デジタル弱者で日本メーカーへの支持もいちばん強い層の人が、ついにファーウェイ導入ですよ。自分の身近な現象としては、今年で一番インパクトが大きい事件だったかも。
山谷 今年、ヨドバシカメラのカメラ売り場で見たのですが、ファーウェイのスマホ売り場に「中華人民共和国のメーカーです」と堂々と書かれていて驚きました。もはや中国メーカーであることが理由で、日本の消費者の購買意欲が削がれなくなったという証左ではないかなと。
ちょっと前まで、サムスンが韓国色を消そうとして「docomoのギャラクシー」みたいな売り方を余儀なくされていたのとは今昔の感があります。