昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「中国スゴい!」「深圳スゴい!」って、それ本気で言ってる?

「B級中国 vs.S級中国」中国ITへの過大評価をぶった切る #1

「スゴい」現象は冷え込み始めたけれど

安田 なにか新しいものが始まりそうなときは、追いかける人がワーッと出てくるし、それ自体は健全なことだと思います。でも、現場で実物に取り組んだり、そこまでやらないまでも対象を長期的に観察することが苦手な人も多い。

 例えば2011年ごろに微博(ウェイボー)がブームだった頃、微博案内人みたいな立場でセミナーで稼いでいたビジネス系の日本人が何人かいましたが、いまも中国ネット関連の第一線にいる人は皆無に近いんですよね。仮に当時から現在まで、彼らが7〜8年ぐらい腰を据えて中国のネット世界に入り浸っていたら、いまごろ相当に重宝されているはずなんですが。

山谷 中国の新しい話題って、定点観測して過去の例と比べたり、並行観測して他の地域の例と比べたりすれば、「フカしているな」とか「長続きしないな」という肌感覚もなんとなくわかる。妥当性がある判断には、やっぱり一定の蓄積が要ります。

北京市内のスーパー。QRコード対応の無人レジ。ただ、イケスの衛生管理が悪くフロア全体に異臭が……(2018年10月安田撮影)

安田 最近、中国のコンテンツに魅力を感じていろいろ調べている20代の人をツイッターなんかで見るんですけど、いまのイノベーションブームが終わっても同じ場所で腰を据えていてほしいなあと思いますよね。

 たぶん、現在の「中国スゴい」現象ってそれほど長続きしなくて、政治的な要因なんかで一度冷え込む気がする。いや、すでに冷え込みはじめている気がする。でも、それでも10年……、いや5年続けていれば、再び「中国スゴい」が来たときにオンリーワンの識者になれるはずなので。

山谷 情報だけでメシを食うのは大変です。でも、中国情報の発信で一応は飯が食える人は、僕がいて安田さんがいて、高口康太さんもいる。これって、ベトナムとかタイが対象ならなかなかできないことです。中国は飯が食える人がいるほどニーズがある国なんだけど、だからこそ、フカしに酔っちゃうことなく情報を発信してほしいですね。

やすだ・みねとし/1982年滋賀県生まれ、滋賀県出身。中国ルポライター、立命館大学人文科学研究所客員協力研究員。立命館大学文学部卒業後、広島大学大学院文学研究科修了。著書に『和僑』『境界の民』(KADOKAWA)、『さいはての中国』(小学館)、編訳書に『「暗黒・中国」からの脱出』(文藝春秋)など。2018年、六四天安門事件に取材した『八九六四』(KADOKAWA)が第5回城山三郎賞を受賞。

 

やまや・たけし/1976年東京都生まれ。中国アジアITジャーナリスト。中国雲南省昆明を拠点に、アジア各国の現地一般市民の状況を解説するIT記事や経済記事やトレンド記事を配信。「山谷剛史の「アジアIT小話」」、「山谷剛史のマンスリーチャイナネット事件簿」、「中国ビジネス四方山話」、「山谷剛史の ニーハオ!中国デジモノ」などウェブ連載多数。著書に『中国のインターネット史』(星海社新書)、『新しい中国人』(ソフトバンククリエイティブ)など。講演もおこなう。

#2へ続く)