チームを盛り上げた試合前の「すべらない話」
11月23日。甲子園球場で行われたファン感謝デーで、中谷将大と伊藤隼太が「乳首ドリル」のパフォーマンスを見せた際に「西田直斗」と書かれた小道具がビジョンに映し出されて、ファンが沸く一コマがあった。実は前日、西田の自宅で深夜まで2人はリハーサルを行っていた。入団時から可愛がってもらい、前年のファン感ではコンビを組んで芸を披露した1歳上の中谷は「西田、明日出てくれよ~」と最後まで懇願。ムードメーカーとしても、チームに欠かせない存在だった。
今季は、2軍の試合前に組む円陣で西田が「すべらない話」を披露する儀式が定着していた。日常を切り取ったものから、下ネタまで……クオリティーの高さは相当なもので2軍を指揮していた矢野燿大監督も大爆笑だったという。戦力外通告を受けた直後、監督からは、長文のメールが届いた。「ファームは日本一になったけど、今年は、本当に西田の声に助けられた。本当にありがとうな」。
誰かを笑顔にする――。間違いなく、彼にはそんな才能が備わっていた。何度も、僕も救われたから断言できる。野球界から離れて進み出す第2の人生でもきっと、大きな武器になるはずだ。
先日、なじみの鉄板焼き店で、ささやかな慰労会を開催した。店を出ても、いつものように「お疲れした!」と互いに言い合って別れた。選手と記者という関係で接してきた7年間に感謝し、僕は、その背中を「ありがとう」と「これからもよろしく」の思いを込めて見送った。
遠藤礼(スポーツニッポン)
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