「一万歩く」は逆効果
いずれにせよ、ひざを守るには「天然のサポーター」である脚の筋肉をつけることが重要なのです。しかし、運動の仕方にも注意が必要です。戸田医師が言います。
「中高年の中には、健康維持のためにウォーキングをしているから、脚の筋肉も鍛えられていると思う人もいるでしょう。しかし、私の研究ではウォーキングやゴルフなど、歩行中心の運動をしている人は、スポーツジムに通っている人に比べ、明らかに脚の筋肉が弱いという結果でした」
確かにウォーキングは高血圧、糖尿病、認知症、うつ病などの予防にも効果的とされており、いい生活習慣ではあるのですが、脚の筋肉を鍛えるという面では十分ではないのです。それだけでなく戸田医師によると、1万歩を超えるような過度なウォーキングを毎日続けた結果、かえってひざ痛を悪化させる人も少なくないそうです。
また、脚の筋肉を鍛えるトレーニングとして、すぐに思いつくのが「スクワット」でしょう。しかしこれも、プロレスラーがするような、お尻を地面すれすれに落として体を持ち上げるようなスクワットをすると、ひざを深く折り曲げすぎ、ひざ痛をかえって悪化させる原因になります。
「1日たった4分でできる」簡単トレーニング
ひざ痛を予防・改善するには、どんな運動がいいのか。戸田医師が第一にすすめるのが、椅子に座って行うトレーニングです。
「片脚を水平にしてひざを10秒間延ばし、その後2秒間脚を下ろします。この運動を5回繰り返してください。12秒×5回ですから、ちょうど1分になります。このトレーニングを左右行うと2分になります。これを朝夕1日2セット行うのがベストです」(同)
また、「椅子から立ち上がるときにひざが痛む」という人には、「足先内向きスクワット」というトレーニングがおすすめです。
「壁のコーナーに背中をつけて、足先が内向きになるように立ちます。そして、ひざをゆっくり曲げて5秒数えます。これを1セット5回、はじめは朝昼晩1日3セット行い、慣れてきたら5セットまで増やしましょう。このとき、ひざがつま先の先端を超えないよう注意し、曲げ過ぎないことが大切です」(同)
これらのトレーニングを行うことで、主に太ももの筋肉(大腿四頭筋やハムストリングス)を鍛えることができます。
しかし、階段を降りる時に痛む人や、布団の中でひざを伸ばしたときに痛む人など、ひざ痛の症状は様々です。その症状に応じて、鍛える筋肉や鍛え方を変える必要もあります。詳しいトレーニング方法を知りたい方は、前出の戸田医師の本を参考にしてください。
日本人の平均寿命は延び続けており、約25年後の2045年には100歳に到達すると予想する科学者もいます。せっかく長生きしても、ひざ痛で歩けないとなると、健康な生活を続けることができません。
年をとっても自分の力で歩いて外出し、介助なしでトイレに行ける生活を長く維持するためにも、若いうちから「ひざ」も意識して、脚の筋肉を鍛えるよう心がけましょう。