私の住む街、大阪府堺市に関西独立リーグのプロ野球チームができる。2018年を振り返って一番心が高鳴ったのはこのニュースだ。名前は「堺シュライクス」という。シュライクは百舌鳥(もず)という鳥のこと。堺市の市の鳥だ。
堺市は、かつては南海ホークスが中百舌鳥と大浜に本拠地を置き、一軍が大阪球場に移っても中百舌鳥をファームの本拠地として置き続けていた。西鉄ライオンズも二軍の合宿所を石津川に置いていた。社会人野球では新日鉄堺という強豪があり、NOMOベースボールクラブもあった。しかし時の流れか、みんないなくなり、プロ野球の公式戦ができる球場も無くなっていた。そんな堺市に独立リーグとはいえプロ野球チームがやってくる。
現在、中区の原池公園内に5000人収容の野球場を造っており、2020年完成予定だ。だんだん球場としての骨格が出来上がるのをみるとワクワクしかしない。ウエスタン・リーグの試合や社会人野球、高校野球、そして堺シュライクスの試合で使われる予定という。(原池公園の野球場が完成するまでは大阪府内の球場を転戦する予定という)
なんだかそれが嬉しくて、堺シュライクス関連のイベントがあれば足を運んだ。堺シュライクスの運営会社の名前は「つくろう堺市民球団」。7月30日に堺市内で50名を集めサポーターミーティングを開催し、球団運営について意見を募った。球団名もユニフォームデザインも応募があった中から投票で選ばれた。クラウドファンディングで出資を募ったところ、期間内に363万円が集まった。たくさんの意見を募り実行に移していく……そんな球団が現実に動こうとしている。
そして11月9日に行われた堺シュライクスのトライアウトを見学してきた。
「高校大学活動なし」など個性豊かな選手たち
堺シュライクスの監督は大西宏明。投手コーチは藤江均。二人とも堺市出身、元横浜ベイスターズ在籍、そして焼肉店を経営しているという共通点がある。大西監督が「必死こいてやっていきましょう!」とトライアウト受験生に檄を飛ばす。藤江コーチがアドバイスをすると、ブルペンで投げる投手の球質が途端に変わる。二人とも現役時代はムードメーカー的な役回りがあっただけに、選手を見る真剣な表情がより際立った。そういえば二人とも12球団合同トライアウトを経験していた。大西監督はそれによりホークスに移籍し、藤江コーチはアメリカ独立リーグに移籍するきっかけとなった。この1日がこの先の運命を決めることは痛いほど知っている二人だ。
そのトライアウトの脇では球団オーナーの松本祥太郎氏と球団代表の夏凪一仁氏が選手相手に面接を行なっていた。時に笑顔を交えながら、時に真剣に選手と首脳陣二人が話をしている。トライアウトを行うその場で面接を行うことはプロ野球では見られない光景かもしれない。
トライアウト後に松本オーナーに話を伺ったところ「素行面を確認する必要もありましたが、どうせやるなら夢や情熱がある人を選んだほうがいいでしょう。そういう人は絶対伸びる。そういう人を探したくて面接を行いました」という。
実際この時期になると有力な選手は大学に行ったり社会人に進むことが決まっていることがほとんどだ。体格だって一回り小さい選手が多い。それでもそんな「エリート」に勝てるとしたら夢や情熱かもしれない。
この時トライアウトに合格した面々の中には今シーズン、チェコのプロリーグに参戦していた鶴巻璃士と安田旺昌がいた。そうかと思えば、他の独立リーグチームに在籍した選手が不合格になる中、公開されたプロフィールに「高校大学活動なし」という選手もいた。採用されたからには他の人にはない力があるはずだ。他にも社会人野球チームの大砲、兵庫ブルーサンダーズの二軍選手、とにかく声で目立つ選手など個性豊かな選手が揃った。