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誰よりもホームランを打つために悩んでいる

 しかし、そうした“無双状態”が決して長くは続かないことは、昨年の経験からも承知している。「去年も、3、4月にめちゃくちゃ打って、5月は全くダメだった。で、9、10月にまためちゃくちゃ打って、あの時の打ち方が、『よし、俺、これはきた!』と思っていたのですが、今年に入ったら、また打ち方が全然違う。5月に入って、「あ、これだ」という打ち方があったのに、最近になったら、「あれ、また違うかな?」と思っている。結局は、その繰り返しなんです。『何が来ても打てる』という状態は、一週間ぐらいしか続かないもの。そういう意味では、『これかな? これかな?』という手探りの状態でホームランを打つことが、逆にいうと、すごく大事です」。

 5月22日から4試合、本塁打が出ていなかった。普通に考えれば、特別驚くことのない数字だが、本塁打率8.57(本塁打1本あたりに要する打席)を誇る山川選手に当てはめると、何とも物足りなく感じてしまう。実際、「はっきり言って、今、身体が重いですし、状態は良くないです」と、本人も正直に認めてもいる。それでも、「こういう状態がいずれ来るというのはわかっていましたし、これが長く続くとも思わない。もちろん、また打てるとも思っている。ただ、この現状を、『調子や体調が悪いから』とか『今日はピッチャーが良い球を投げてたから仕方がない』とかで終わらせないで、技術の問題だと捉えたい。少しでも良くなるために、自分なりに『こうじゃないか?』『ああじゃないか?』と思って試すことが大事。それが、のちに間違いなく引き出しになりますから。どんなに疲れている時だって、疲れている時のホームランの打ち方があると、僕は思います」。

 山川選手から話をお聞きするたびに、なぜ彼が、これほどまでにホームランを打てるのかがはっきりとわかる。誰よりもホームランを打ちたがっているからだ。誰よりもホームランを打つために悩んでいるからだ。誰よりもホームランを打つために試行錯誤し、実践しているからだ。

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 5月27日、日本野球機構(NPB)から【マイナビオールスターゲーム2019】のファン投票第1回中間発表が行われた。西武の4番打者は2万2811票を集め、両リーグを通じて最多得票となった。6月24日の最終発表まではまだまだ先だが、このまま最多得票選出されるだけの価値が、山川穂高という男にはある。全身全霊をかけてホームランだけを狙う。その1打席、1打席は、結果にかかわらず、絶対にファンの期待を裏切らないはずだ。

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