「竜の熱男」になれ
伊藤康祐の武器はスピードと書いたが、もっとも大きな武器は、強い心と底抜けの明るさなのかもしれない。中京大中京の主将の頃にはこんなコメントを残している。
「自分が打てない時こそ声を出す、元気を出す、笑顔を作るということを意識しています」
緊張するとワクワクするタイプ。緊張するとバットが出なくなる選手が多いが、緊張するほどどんどんバットを振っていく。国際試合は「めちゃくちゃ楽しい」と声を弾ませる。
尊敬しているのはソフトバンクの松田宣浩。勝負強く、明るく、チームを盛り上げる存在だ。
「チームが苦しい時こそ、松田さんのようなパーソナルを持った選手が必要になる」
ドラゴンズの寮に入ったときに持参した名前入りの箸の箱には「竜の熱男」と刻まれていた。
今、ドラゴンズは6年連続Bクラスの真っただ中にいる。球団創設以来の事態だ。「中京史上最弱」ならぬ「中日史上最弱」である。信じられない負けもある。コールドのような負けもある。そこから勝ち上がるには、ドラゴンズも「泥団子集団」にならなきゃいけないんじゃないかと思うときがある。
もちろん、精神論だけですべて上手くいくわけじゃない。プロで勝ち抜くには、強靭な肉体、研ぎ澄まされた技術、積み重ねた経験が必要だ。だけど、最後の紙一重の勝負を分けるのは、強い気持ちじゃないだろうか。伊藤康祐にはそれがあると思う。
目標は「ドラゴンズに欠かせない存在」。好きな言葉は「笑顔」。
物心ついたときからドラゴンズファンという伊藤康祐には、「竜の熱男」となって夏場が苦手なチームの力になってほしい。今シーズンまだサヨナラ勝ちがないチーム、5回終了時でビハインドなら勝率0.00というチームの起爆剤になってほしい。
そして、同じ年の清水達也、石川翔、高松渡、山本拓実、いつもイチャイチャしている石垣雅海らとともに、新しい時代のドラゴンズを担う中心選手として大きく育ってほしい。心からそう思う。
……でも、復帰はくれぐれも万全の体調で。万が一、この記事を読んでも焦ったりしないでくださいね。
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