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――村上、廣岡両選手など、若手の起用が目立つ中で、故障や不調などによって、今浪さんと同世代である1984(昭和59)年生まれの坂口智隆、大引啓次、雄平選手たちの出番が減ってきています。この点は寂しさを感じませんか?

今浪 彼らももうベテランなので、チームが最下位であるという現実、彼ら自身も納得のいく成績を残していない以上、試合出場が減るのはある意味では自己責任。その点は彼ら自身もよく理解しているはず。実際に口に出すかどうかはともかく、彼ら自身も内心では衰えを感じ始めている部分もあるかもしれない。だからこそ、一日、一日を、一球、一球を、そして一瞬、一瞬を楽しんでほしいと思います。

――今浪さんはひと足早く、現役を引退されました。現役晩年は「一瞬、一瞬を楽しむ」という心境だったのですか?

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今浪 いや、まったく逆ですね。身体の調子が悪く、常に自分自身と自問自答していると、野球が楽しくなくなってくるんです。僕自身は、まったく野球を楽しむことができなかった。苦しくて、苦しくて、逃げ出したかった。野球を楽しむ余裕なんて、微塵もなかった。それは今、ちょっと後悔しています。だから、彼らには「大変な状況なのはわかるけど、楽しみながら野球をやってほしい」という思いは強くありますね。

悪ガキ根性で、徹底的に首位いじめを!

――8月も中旬となり、ペナントレースも残り40試合を切りました。この時期からチームが浮上するための「今浪流再建計画」を教えてください。

今浪 一ファンとしては「まだまだCS(クライマックスシリーズ)出場を狙ってほしい」と言いたいです。でも、現実的には厳しいのも事実。だから、僕が期待したいのは「首位いじめ」ですね。CS進出が厳しくなった今だからこそ、首位争いをしている上位チームに対しては、「オレたちが邪魔してやろう」という思いで、徹底的に意地を見せてほしいですね。ヤクルトの頑張りがペナントレースを面白くすると思うんです。自分たちの爪痕を残しながら、悪ガキ根性で首位いじめに励む。そんな戦いを見たいです。

――最後に伺いたいのは、7月11日に行われたドリームゲーム。今浪さんも選ばれ、試合ではレフトを守り、果敢にスライディングキャッチを試みました。

今浪 あのゲームは本当に楽しかったですよ。自分はわずか3年半しかヤクルトにいなかったのに選んでいただいて、本当に嬉しかったです。歴代OBたちは、ほぼ初対面の方ばかりだから、出場者名簿をもらってからすぐに調べました(笑)。「最初はサードで途中出場」って言われていたのに、いきなり「今浪、レフトで行くぞ」と言われて焦りました(笑)。捕れるか捕れないか微妙なフライが飛んできたので、スライディングキャッチを試みたけど、わずかに捕れなかったですね。あのときは内野手用グラブだったけど、外野手用だったら、間違いなく捕れていました(笑)。その後、2週間ぐらいはずっと腰痛に悩まされたけど、あれは本能で出たプレーで、無意識にスライディングしていましたね。

――僕にとっては子どもの頃からのヒーローたちの中に、今浪さんが普通に溶け込んでプレーしている姿は新鮮だったし、楽しかったし、とても嬉しかったです。完全に「ヤクルトの人」という感じでしたからね(笑)。

今浪 野手としては若手だったので、もっと活躍したかったです。OBの方も、ファンの方も、みんな優しく温かかったのが嬉しかったです。あの日の神宮球場も「ヤクルトらしい」空間だったですよね。

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