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ベイスターズ・今永昇太の魂の快投を機に振り返る「1-0完封勝利」という価値ある記録

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/08/20

 もしこの先、ベイスターズがどんな結果に終わろうとも、僕たちは8月18日の今永昇太の姿を忘れることはできないだろう。140球、被安打5、10奪三振、1-0の完封勝利。序盤にピンチを招くも次第にギアを上げ、8回には西川のピッチャーライナーをグラブで叩き落すように捕って吼え、志願して9回もマウンドへ。最後、會澤から三振を奪うとグラブをバンバンと何度も叩いて雄叫びを上げた。前登板の11日に5回3失点で降板し、そこから連敗が始まっただけに今永は特に気持ちが入っていた。

 この日の今永はどれだけアドレナリンが出ていたのか。その様子はテレビ画面からもビンビンに伝わってきたし、ハマスタにいた人ならもっとヒシヒシと感じられたはず。特に9回表、マウンドに向かった際の球場全体の今永コール。アウトを取る度にウオオオと沸き上がる怒号のような歓声……。今永の魂がチームと、スタンドと、全ベイファンをひとつにした単なる1勝以上の価値がある一戦だった。

 キツい暑さの下、すでに126球投げているエースが山﨑康晃という鉄壁のクローザーがいるにもかかわらず、1-0の9回にマウンドに上がりビシッと締める。今永自身もヒーローインタビューで触れていたが、まるで高校野球のようなこの展開は、ひとつ間違えれば高いリスクを背負ってしまう。だからこそしっかり抑えた今永に心を揺さぶられるのだ。

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18日の広島戦 完封勝利を挙げ、戸柱恭孝と抱き合って喜ぶ今永昇太

1-0の完封勝利を記録した投手たち

 近年はリリーフなしの1-0完封勝利というのはかなりのレアケースで、今季はライオンズの多和田真三郎が4月12日に記録したのみ。ベイスターズでは2015年6月30日に久保康友が中日戦で記録して以来だ。今永は今回で通算5度目の完封だが、1-0は初となる。

 1950年に始まったホエールズ~ベイスターズと続く歴史の中で、1-0の完封勝利は今回の今永を合わせて162試合ある。そのうちリリーフなし、1人で投げ切ったのは78試合。過去にどんな投手がこの記録を成し遂げたのか? 少し振り返ってみよう。

 2002年以降長らく暗黒期に入ったベイスターズだが、クアトロKに山口俊、そして今のヤスアキとリリーフ陣が比較的揃っていたこともあり、1人1-0完封勝ちはやはり少ない。近年で1-0完封勝ちが6試合と最も多かった17年もすべて継投で、久保康友の前は14年9月30日タイガース戦の山口俊、その前は12年9月7日カープ戦の国吉佑樹まで遡る。ゼロ年代は09年にS・ランドルフ、07年に三浦大輔、02年にS・バワーズが達成している。あなたは森祇晶政権時代に崩壊した先発ローテを守った男、バワーズを覚えているだろうか。

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