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キャプテン・高橋周平からの教え

 同期がフラッシュを浴びる中、ノースローの日々が続く。これには体が震えるほどの悔しさがあった。ただ、悪いのは自分。全ては早く右肘の痛みを訴えなかったことに尽きる。これには食いしばる歯が割れそうなほどの後悔があった。そんな乱れる心を静める方法はただ1つ、治療とリハビリを続けるのみだ。

「やっと9月3日にブルペンに入れました。今のメニューを順調にこなせば、フェニックス・リーグで実戦登板できる予定です。あと、周平さんに治療院を紹介して頂きました。怪我で離脱していた時はほとんど毎日通っていたので、僕が行く日は車に乗せてもらいました」

 車内が学びの場だった。

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「バッターは意外とど真ん中が難しいとか。自分の球を信じることが一番大切とか。色んなことを勉強できました」

 当然、会話は一旦途切れ、しばらく沈黙が流れる。すると、高橋は決まって同じフレーズを発したという。それはあのキャンプの部屋で口にしていた言葉と一致する。

「勝ちたい」

 今年から胸にキャプテンマークを刻んだ男はいかなる時もチームの勝利を渇望していたのだ。

「常に周平さんは『自分の成績はどうでもいい。とにかくCSに出たい』と言っていました。ドラゴンズが変わったと思われるには勝つしかないと」

 助手席でこぶしを握った。そして、思った。

「この人と一緒に戦いたい」

 今年も残り18試合ほど。7年連続で辛酸をなめるのか。奇跡を起こすのか。いずれにせよ、高橋は主力として「今」を戦い、石川翔は「未来」で輝くために歩みを進めている。そして、右腕は静かに告白した。

「先の話ですが、実は9回を投げたいとも思っています」

 阿波野コーチに高卒2年目トリオの育成方針を聞いた。

「まずは可能性を引き出すために3人とも先発で起用しようと考えています。ただ、私はこの1年、各選手の長所や短所、性格などを把握し、取説を作ってきたつもりです。その点、将来的に翔はリリーフも面白いと感じています。長いイニングを任せるより『全力で20球を投げ込んで来い』と送り出した方が力を出せるタイプ。1球1球に爆発力があります」

 今、ライバル2人は先を走っている。尊敬する先輩も遠くで戦っている。最後方にいる石川翔。2年も遠回りした彼が重いバトンを受け取り、試合を勝利で締めくくる日はいつになるのか。もう一度、言い聞かしてみる。

「主役は最後にやってくる」

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