古葉竹識の座右の銘「耐えて勝つ」を思い出す
最近のベイスターズの戦いを見ていると「耐えて勝つ」というワードが自然と頭に浮かんでくる。1987~89年に監督を務めた古葉竹識の座右の銘であり、ファンからサインを求められるといつも色紙に書いていたというこの言葉。当時リリースされた応援歌『古葉、大洋よ覇者となれ』(唄・大石吾郎)にも“男は耐えて、勝つことを ゲームの度に示すのさ”と歌詞があるほどだが、正直あの頃のホエールズファンにはあまり響く言葉ではなかった。
“大洋はカープとは違うしね”
“それよりスーパーカートリオ復活しないかな”
“また田代がレギュラーで出てくれないかな”
時に豪快な勝ち方をするが負ける時はあっさり淡白。チームもファンも諦めの早いことこの上なし。耐えて勝つって言われても大洋じゃ無理じゃね? 笛吹けど踊らず。古葉イズムはほとんど浸透せずチームはあえなく崩壊し、むしろ後任の須藤監督時代の方が泥にまみれたしぶとい野球を見せていた。
しかしあれから30年余りの時を経た2019年、今ほど一試合一試合「耐えて勝つ」ことの大切さを噛みしめられるチーム状況もない。一昨日(10日)の巨人戦だってそうだ。頼みの今永とエスコバーが打たれて1-4の劣勢。9回裏2アウト。このまま負けたら目も当てられないって時に飛び出した柴田のホームラン。負けるにしてもあっさり終わらない。そんな柴田の粘りの姿勢、そして連日連夜のリリーフ陣の奮闘ぶ
古葉監督は当時、こんな発言を残している。
「チームとしての意思を、いかに徹底させるかが、僕らの仕事です。中途半端な気持ちでやっていては、それなりの野球になってしまう」(月刊ホエールズ1987年2月号より)
戦力は明らかに劣っている、故障者も多い、揃いもそろって調子を落としている。キツい状況はあれども「自分たちは絶対に勝つんだ」という姿勢。色々と言われるラミレス監督だけど、名将・古葉竹識がいみじくも語り、それでも成しえなかった「チームの意思を徹底させる」そして「ポジティブな空気を作る」ことについては、この4年間心血を注いできたのだろう。それは今の順位とゲーム差に表れているし、特に夏場以降のベイスターズはまさしく耐えて耐えて、耐え抜いて勝ちを掴み取っている。
残り11試合、選手たちはもう気持ちで戦う段階だろう。伊藤光が戻ってきた。奇跡的な回復ぶりを見せた宮崎も今日一軍に復帰するという。そして「2位でも3位でもなく、優勝を取りにいきましょう!!」(9月12日付SANSPO.COMより)。昨日そう檄を飛ばしたキャプテン・筒香の、98年10月6日の佐伯ばりのガッツポーズをもう一度。巨人と4ゲーム差、直接対決は残り4。最後まで、諦めない。
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