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文春野球コラム

いしいひさいち先生の野球マンガの中にいる“ファイターズ選手”を探せ!

文春野球コラム 日本シリーズ2019

2019/10/22
note

 という訳で日本シリーズも佳境です。本物の野球の方も、この文春野球コラムペナントレースも。と去年と同じ書き出しで始めてしまいましたが、厳密に言うとまだ「佳境」ではないですよね。実際の野球とは違い、こちらは必ず7試合全部やることに決まっております。まだ2試合が終わっただけ。あまり気張らずに行きましょう。

 とか何とか呑気なことを私が言っていられるのは、チームの1人という立場であるからに他なりません。対戦相手は、代打はあるとはいえ基本的に長谷川晶一監督のワンマンチーム。先日のCSファイナルなんて6日間連続ですよ。それも続き物ではなく、全く別個のコラムを毎日1つずつ! しかももちろん本業と同時進行でです。

 プロの書き手ってほんと凄いよなあと思いながら長谷川さんのツイッターを眺めていたら、2か月ほど前のこんなツイートが目に留まりました。

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 ここにぶら下がる大量の「ぜひ原稿にしてください!」リプライ群の中に、えのきど監督も私もいるではありませんか。たちまち甦ってくる記憶。そうだ、そうだったんでした。えっほんとに広岡さんにそれ訊いたの!と色めき立ったんですよ。こんな重大事を個人的興味で訊いただけなんて、それはずるいってもんですよー。

 という大反響は長谷川さんの予想しないものだったらしく、後刻《先日、大矢さんに会った時に大矢さんにも聞けばよかった。》というツイートが。うわあ、ほんっとにもう羨ましい!

 いや、「これで3人の証言が揃った」なんですよ。「次は古澤憲司氏だな」「大矢さんにも聞けばよかった」なんですよ。そんなに何人も、いしいマンガに描かれていたということなんですよスワローズは。これを羨ましいと言わずして何としましょうか。ファイターズなんてねえ!

パ・リーグ選手ネタを探してみた

 それは確かにあります。「ガラガラの後楽園球場でわずか数人のファイターズ応援団がやけくそでまいてる紙吹雪は5万枚刷って大量に余りまくったチケット」なんていうような作品が(『ワシらを野球に連れて行け』双葉文庫)。しかしタブチくんやヒロオカ監督のような実在の人物ネタのものは、今現在のところ私は1つしか見つけ出せていないのです。就任したてのタカダ監督が老番頭のようなコーチ達に逆らってヒットエンドランのサインを出すものの、そのサインを凝視した打者(背番号3なので白井一幸ですね)は送りバントを決める、というそれはそれは物悲しい作品です(同上)。

 まあファイターズに限らずパ・リーグはやはり少ないんですよね。まとまった量があるのはタブチくんやヒロオカ監督ネタのライオンズぐらい。セ・リーグだって全球団が同じように題材になっている訳ではなく、タイガースとジャイアンツとスワローズに集中しているのではありますが、パ・リーグものは本当に少ない。

 手持ちの本をひっくり返し、①ライオンズは除く ②ナベツネ・ツネオ氏がらみも除く との条件でパ・リーグ選手ネタを捜した結果、何とかもう1つ見つかりました。「オープン戦で打ってもゼニにならないのにホームランを打ってしまって損したなー損したなーと落ち込むオリオンズ落合博満」です(『未曽有だよ プロ野球』双葉文庫)。まだ他にもないでしょうか。いしい作品に詳しい方のご教示をお待ちしております(文春野球を私用に使うなっ)。

 10年前に病気療養して以来、いしいひさいちの連載は新聞4コマ「ののちゃん」だけになりました。これは主人公一家とその周辺限定の内容で、従って野球ネタの新作はもう望めないと思うのです。ジャイアンツの監督が三たび原辰徳となっても、「キャハ」と笑うハラ監督の新作はありません。もしもダルビッシュ有を田中将大を大谷翔平をいしいひさいちが描いたとしたら、という想像も全て見果てぬ夢のまま。寂しいなあ。

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