平沢大河のブレイクこそ待望したい
では、ひるがえって野球はどうか──。
野球もお笑いも、人を魅了するという意味では、同じベクトル。ほんの些細なきっかけ、人との出会い、数奇な巡りあわせから、一夜にしてスターが生まれるのも、よく似ている。
ミルクボーイのふたりが、「後輩である霜降り明星の優勝に感化されて」あそこまでのブレイクをつかんだのなら、あの場の“お約束”でそのミルクボーイに太鼓判を押してくれた平沢大河が「仙台育英の後輩・西巻賢二の加入に感化されて」ブレイクしてくれたって全然いい。たとえ最後まであきらめなかったものにしか野球の神さまは微笑まないとしても、苦しみながらもここまでひたむきに野球と向きあってきた平沢大河にだって、十分にその資格はあるはずだ。
商魂たくましいマリーンズのことだから、さりげなくネタに『モナ王』のワードを入れこんでロッテ愛をにじませていたミルクボーイのことは、遠からず始球式などにも呼ぶだろう。市販のストライプユニに「SATOZAKI 22」とマッキーで手書きしただけだった内海の背番号は、そのとき間違いなく刺繍のワッペンが圧着されたちゃんとしたものになるはずだし、ともすれば“ネタ元”である里崎智也氏による“ご本人登場”だってあるかもしれない。
でも、ぼくがなによりも観たいのは、平沢大河が1軍でがっつりブレイクして、ぎこちなかった4年前のあの“対面”を、ミルクボーイのふたりと一緒に笑い話にする姿。「好きな芸人はミルクボーイ」と言わせたあの動画は、ぼくたちファンがいまや遅しとブレイクを待ち望む平沢大河の活躍があって初めて、本当の「お宝」になると思うからだ。
彼も今季ですでに5年目。内外野のどちらでチャンスをつかむにせよ、昨年のドラフトで入った大卒組──とくに内野手の福田光輝(5位)や、外野手の高部瑛斗(3位)らは、ポジションでも争う同学年のライバルだ。あのとき「目標にする選手」として名前を挙げた鈴木大地も新天地へと移籍したいま、大学でも社会人でもない「プロでの4年」の集大成をどう見せるか。20年シーズンは、その真価が問われる正念場にもなるだろう。
チャンスをモノにしたミルクボーイは、真顔で「好きな芸人」に挙げても、誰からも異論の出ない正真正銘の売れっ子芸人への階段を、いまこの瞬間も登っている。だとすれば次は、大河の番。「どうだウチの大河はスゴいだろ」。そんなセリフでドヤ顔ができる日を、ぼくたちは心の底から待っている。
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