1ページ目から読む
2/2ページ目

最後まで現場復帰を願った名将の最後の打席

 話はDREAM GAMEに戻る。4回、この試合のハイライトともいえる出来事が起こる。“代打・野村克也”というサプライズ演出。しかし、その足元はおぼつかない。古田敦也、川崎憲次郎、真中満、そして池山という愛弟子たちに支えられてなんとか打席へ向かう。

ドリームゲームで打席に立った野村克也氏 ©時事通信社

 それでも打席に入れば背筋もバットもピンと立ち、表情はこの日一番の笑顔。それは、「ヤクルトで野球をやるようになって、野村さんはどんどん明るくなっていった」と池山が語る、頑固一徹だった野村監督が90年代ヤクルトの選手たちと過ごすうちに身につけた笑顔だった。そして2球目にはスイングも披露。球場全体が沸いた。

「野球人は死ぬまで野球人なんだなと。野村さんはきっと今でも監督をやりたいと思うよ。僕も現場を離れてるけど、やっぱり野球は見るより教えるほうが性に合ってる。できれば、今後ヤクルトで野村さんの野球観を継承したい。もちろん池山カラーもちょっと出しつつね。野村さんのあの姿を見て改めてそういう気持ちになったよ」

ADVERTISEMENT

©文藝春秋

 その池山はヤクルトの二軍監督に就任。そして同じく野村ヤクルト黄金期を支えた守護神、高津臣吾も今年から一軍の指揮を執る。

 子弟の絆は時を経ても消えるものではないことを証明する美しい一幕。そして、野球の神様がプレゼントしてくれた最後の打席。多くのヤクルトファン、いや、野球ファンの目に焼きついたはずだ。

 野村監督、本当にお疲れ様でした! そしてありがとうございました!

※本稿は2019年8月16日発売の「EX大衆」(双葉社)に掲載されましたが、哀悼の意を込めまして、加筆・修正したものです。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ウィンターリーグ2020」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/35809 でHITボタンを押してください。

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。