海外メディアのすさまじいレビューにより、日本公開前から注目を集めていたアリ・アスター監督、フローレンス・ピュー主演の映画『ミッドサマー』。不幸な事故によって家族を亡くした主人公、ダニーは彼氏のクリスチャンとクリスチャンの友人たちと共にスウェーデンの辺境のカルト村「ホルガ村」で行われる夏至祭の中で恐ろしい体験をするというフェスティバルスリラーです。

元カルト信者としての感想に大きな反響が

 2月に日本で公開された後、同作を見にさっそく劇場へ足を運びました。同作が気になったのは、話題の映画であるからだけではなく、私自身、元カルト信者だからです。見終わった後、元カルト信者としての感想をツイートしたところ、大きな反響がありました。


 結論から言うと、『ミッドサマー』のカルト宗教の描写は元カルト信者の私から見ても、とてもよくできています。私のカルト宗教での実体験や、『ミッドサマー』のカルト描写で共感したポイントを紹介したいと思います。

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『ミッドサマー』より ©2019 A24 FILMS LLC. All Rights Reserved.

※以下の記事では、現在公開中の映画『ミッドサマー』の内容と結末が述べられていますのでご注意ください。

大学時代、先輩にボランティア活動に誘われた

 私がカルト宗教に入信した始まりは大学1年生の2学期になってのことでした。大学の近くで信号待ちをしていた時に同大学の先輩の見知らぬ二人組に声を掛けられたのです。

 二人組は、自分達はボランティア活動をしているサークルのようなものにいて、今は体験キャンペーンとして新入生を募集していると、私を勧誘しました。当時、大学公認のボランティアサークルに所属していた私は、ボランティア活動の勉強になるのではないかと試しに参加してみることにしました。

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 今にして思えば、大学の掲示板によくある「サークルの新歓と見せかけて宗教に勧誘する人たちがキャンパスの周りに出没するので気を付けましょう」の張り紙通りの展開ですね。ただ、張り紙に書かれていなかったことは、「カルト宗教は決して宗教を自称しないものだ」ということです。

 サークルのレクリエーションや、地域でのゴミ拾いなどのボランティア活動を経ても、先輩たちはサークル活動が宗教の一環であることは明かしませんでした。こうして私は、自分でも知らないうちに、入信への一歩を踏み出していたのでした。