最速145キロの元投手ゆえに身についた“変化球”
もう一人のシュートの使い手である三好は、プロ入り後に習得したと言う。「シュートの方が一塁は捕りやすいと思います。その逆のカットは急に変化するから、捕るのが難しい。プロに入って1年目か2年目には、シュートを投げるようになりました」。
九州国際大付では3年春の選抜でエースとして準優勝し、プロ入り後に内野手に転向した。縦回転の直球を追い求めてきた投手時代からは、真逆の発想とも言える。「外国人の送球とかを見ていると、スライダーとかに変化したときは取りにくそうだな……と。それならシュートした方がいいなと思いました」。観察から生まれた“変化球”だった。
19年途中に、楽天から広島にトレード移籍した。プロ8年間で通算144試合を守った遊撃での失策は6つで守備率.981。単純比較はできないものの、昨季、遊撃でリーグ2位だったDeNA・大和が同.981。1軍に定着する要因となったチーム随一の守備力は、シュートによって支えられている。
簡単に扱える“球種”ではない。山田内野守備・走塁コーチが証言する。「シュートを扱えるのはハイレベルな選手だけ。誰でもできるようなことではない。シュートを投げようとすると体が開くから本当は怖いけど、三好は元投手だしね。そういうときは、横から投げたり工夫していると思う」。同コーチいわく、強肩も一つの条件だ。最速145キロの元投手ゆえに身についた球種なのだろう。
一見、負の印象のある「シュート回転」も、意図的に曲げる場合は一級品に変わる。2人に共通していたのは、受け手を想定していること。思いやりの球種である。
河合洋介(スポーツニッポン)
◆ ◆ ◆
※「文春野球コラム2020 オープン戦」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/37509 でHITボタンを押してください。
この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。