シュートを投げる。投手ではない。野手の話である。広島の捕手と内野手の中で、それぞれトップクラスの送球の安定感を誇る2人。ドラフト5位・石原貴規捕手(22、天理大)と三好匠内野手(26)は、送球を“変化球”で曲げていると言うのだ。
“スリークオーターからのシュート”で抜群の安定感
石原貴から紐解きたい。「スリークオーター気味にシュートを投げています」。字面だけなら、投手のくだりである。同1位・森下と同期入団の大卒新人。春季キャンプで1軍に同行し、新人離れした守備力で評価を高めた。特に送球の安定感は抜群だった。2月15日の阪神との練習試合で昨季の盗塁王・近本の二盗を阻止するなど実戦派の一面を印象づけて、現在は2軍で腕を磨いている。
スポニチの過去記事には、大学4年春のリーグ戦の盗塁阻止率は10割とある。「そうなんですかね……。確かに走られた記憶はないです」。いわゆる「甲斐キャノン」のような強肩タイプではない。確実な制球力でプロへの扉を開いた。秘密は「シュート」にあると言う。
「シュート気味に二塁に投げています。シュートしてきた流れのままタッチにいきやすい。いまのところは、上からキレイな縦回転で投げようとは思っていないですね」
あえてスリークオーター気味に腕を下げることで、安定したシュートを生み出している。捕手は、オーバースローが一般的。春季キャンプでは、倉バッテリーコーチが「なんでそれで投げられるんや?」と首をかしげたと言う。大学時代に送球フォームを矯正しようと試みたこともあったが、「ダメでしたね」と“横手投げ”を貫いている。
「僕は横からしか投げられない。上からキレイな縦回転で投げようとすると、引っかけたときにカットしてしまう。それで三塁側に逸れたら最悪。それならシュートして、一塁側にズレた方がまだいいと思う。二塁到達タイムよりも、タッチしやすくアウトになることが大事なので」
他球団の練習を見ながら「○○さんはキレイに上からだけど、△△さんは結構横からですよ」とスラスラと答えるほどに、先輩捕手の投げ方を分析している。倉バッテリーコーチは、「スライダーするよりかは、シュートした方がいい」と認める。「石原(貴規)は大学時代からこの投げ方で刺してきて、プロに入ってもいいものを見せてくれた。直そうとは思わない。あとはプロで試合に出続ける中で、毎試合できるかどうか。石原の送球は長所であり武器」。“スリークオーターからのシュート”で首脳陣をうなずかせた。