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 一方、YouTube未公開シーンで特に心惹かれたシーンが二つある。一つ目は誕生日だというファンに「ハッピーバースデー」の生歌を披露したところだ。かつてドームのお立ち台で工藤公康監督に向けて歌ったことがあり、それにちなんでファンの要望に応えた形だったが、「いえいえお安い御用ですよ。ハッピーバースデーは毎日練習してるんで(笑)。言ってもらえれば、いつでも歌いますよ」というリップサービスをおまけするところがいかにも柳田らしかった。

 もう一つ「明日結婚記念日なので、おめでとうコールをしてください」というラジオ的ノリなおねだりにも全力対応だ。で、これだけで終わらない。「え、何年目なんですか?」と逆質問を投げかけて会話を拡げていた。そんなに特別なことではないかもしれないが、スター選手の方から気にかけてもらえたファンはもう絶頂のテンションである。このようなファンサービスの場でのちょっとした気配りを自然に出来てしまう。

 この人間味が柳田の一番の魅力なんだろうな、と勝手に納得しながら、ほのぼのした気持ちで画面を見つめるおうち時間を過ごさせてもらった。

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サービス精神旺盛(球団提供)

「僕は僕のままなんじゃないですか」

 そしてつくづく思う。柳田はもうプロ10年目。球界最強の超人になり、立場はどんどん変わっていっても、彼はずっと気のいい兄ちゃんのままだ。正直、長年のプロ野球取材の中で、ここまで変わらない野球選手は珍しい。

 そんな質問を素直にぶつけてみたことがある。すると少し考えて、そしてマジメな顔で答えてくれた。

「だって野球って難しいじゃないですか。上手くなるために自分がやること自体は若い頃だって、今だってそれ自体は変わっていない。僕は僕のままなんじゃないですか。ま、野球はちょっと上手くなったかな。ホントちょっとですけどね」

 柳田は2020年のシーズンを迎えるにあたって、昨年12月にホークスと新たに最大7年間という大型契約を結んだ。契約更改後の記者会見の中では、既存の複数年契約(2020年までの3年契約だった)はメジャー移籍を意識したものだったと明かしたうえで、「怪我をして(2020年中に)海外FA権をとれないという形になって、これも運命かなと思った」と悲壮感はまるでなく、笑顔で話した。

「僕は流れとか運命とか信じる方なんです。それに子どもの頃の夢はプロ野球選手になることでした。だから今、幸せな舞台で僕は野球をやれているんです」

 昨年怪我で悔しい思いをした分、キャリアハイの成績を出して、オリンピックにも出場して金メダルを獲るという最高のシナリオを描いていた。今年、それを叶えることは出来なくなったが「それをイメージして準備してきたことは今後にも生きる。無駄じゃない」と前を向く。みんなが大好きなギータはいつだってポジティブ。それも愛される理由だ。

 先日、彼に電話取材をする機会があった。その時の柳田からのメッセージで本稿を締める。

「いつか戻る日常、そしてプロ野球の開幕まで、皆さん今は我慢してください。しんどいとか、そういう思いはみんな同じですが、一緒にもう少しだけ辛抱しましょう」

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