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一時的にでも「プロアマ」の壁を取り払うべきではないだろうか

 コロナショックを機に、子どもの競技人口減少の進む野球界では地盤沈下が進んでも不思議ではない。独立リーグは厳しい状況に置かれ、社会人チームでも野球どころではない企業が出てくるかもしれない。お金がかかりすぎるため、子どもに野球をやらせられない家庭が増える可能性もある。

 そうなると、プロ野球への影響も計り知れない。プロ野球は、アマチュアの育てた選手を使わせてもらってビジネスを行っているのが、日本球界の構造だ。アマチュア野球の裾野が狭まると、プロ野球にとって大打撃になる。

 5月11日にオンラインで行われた12球団代表者会議の後、斉藤惇コミッショナーは日本高等学校野球連盟との連携について聞かれると、こう答えた。

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「なかなか難しい問題。高野連は伝統的歴史的に収益がらみ、企業がらみとは独立しているという方針を厳しくとっている。いろんなケースでできるだけそこには巻き込まれないようにという方針。相談も受けていないし、静かに見守っていこうと思っている。我々の方から仕掛けることは多分ないだろうと思います」(同日付のデイリースポーツ電子版より引用)

 学生野球憲章があり、プロと学生は簡単に手を組むことができない。しかし未曾有の事態で求められるのは、“常識”を超えるやり方だ。

 高校野球は夏の甲子園や地方大会を開催しようとしているが、仮にコロナ対策を施せたとしても、無観客の中でどうやって運営していくかという金銭的な問題がのしかかる。これはこの夏に限らず、秋、そして来年以降も続いていく可能性のある問題だ。

 プロ野球が支援するという発想もあるだろうが、それより、アマチュア団体が自立して歩んでいけるスキームの構築が望ましい。持続性の観点からだ。

 例えば侍ジャパンの世代別対抗戦として、プロ野球、社会人、大学生、高校生代表が参加するトーナメント戦を開催し、その収益をすべて各アマチュア団体に還元する。また、小中学生年代にも活動資金として下ろしていく。アマチュアの組織にとって、貴重な財源になるはずだ。学生野球憲章に引っかかるかもしれないが、「特例」として実現できないだろうか。

 Withコロナ時代の野球界は無観客試合、あるいは限定された客数の中で、どうやってお金を回していくかが課題になる。加えて多くのアマチュアの大会が中止された中で、どのように今年のドラフト候補を見極めていくか。ドラフト候補生のトライアウトを開催するにしても、獲得するプロ側と、アピールするアマ側が手を取り合わなければ解決できない。

 野球界は一時的にでも「プロアマ」の壁を取り払い、双方が歩み寄って、選手たちのためにできることを最大限に追求していくべきではないだろうか。過去の因縁や各団体の理念の違いを考えると「言うは易く行うは難し」であるものの、コロナショックを乗り越えるには固定観念を取り払って考える必要がある。

 ピンチをチャンスに――。

 コロナ禍で数多く聞かれるこの言葉だが、野球界も前向きな変革を模索していくには、これほど格好のタイミングはない。

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