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 WeWorkの一件によって、多くの投資家たちはこのように感じたはずです。

 急成長している企業、AIを推進する企業、とりわけ「ユニコーン」と呼ばれる未上場で時価総額が10億ドルを超える企業に積極的に出資しているけれど、彼らの財務状況ははたして健全なのだろうか。このまま出資を続けて、本当に大丈夫なのだろうか、と。

 これは、投資家たちに「新興企業への出資に対する不安」を抱かせる出来事であり、まさに「終わりの始まり」を感じさせる不穏なニュースだったのです。

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©︎iStock.com

WeWork、Uber、そしてコロナショック

 2017年、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが立ち上がった当初は、970億ドル(約10兆6700億円)という、予想をはるかに超えた金額を集めたことで世界的な注目を集めました。

 孫氏の強気なスタンスは変わらず、2019年には「2号ファンド」を呼びかけていますが、今のところ、お金集めに苦労しており、「ウォール・ストリート・ジャーナル」の記事(2020年2月)によると、目標額(1080億ドル)の約半分ほどで、かつ日本企業が多くを占めていると報じています。

 ソフトバンク・ビジョン・ファンドのつまずきは、孫氏だけの問題ではなく、スタートアップを取り巻くマネー環境全体に大きな影を落としています。

 2013年頃から続いてきた、いわゆる「スタートアップ・バブル」も、ついに終わりが見えてきており、ベンチャーキャピタルの投資姿勢にも大きな変化が起きています(図表)。

(図表)投資家タイプ別投資額の推移

 じつは、WeWork問題が発覚する3カ月前に、その予兆ともいうべき出来事がありました。

 近年のスタートアップの象徴ともいうべきUberの上場です。

 上場前の予想ではUberの時価総額は900億ドルから1200億ドルの間になるとアナリストは予測していましたが、現実には720億ドル(2019年5月)に留まり、さらにWeWork問題が発覚してからは一気に株価が下落して450億ドル(2019年11月)を下回りました。このUberもビジョン・ファンドの出資先で、ソフトバンクグループ(約16パーセント)が筆頭株主なのです。

 2008年に起きた「リーマン・ショック」の際にも、その前兆がありました。それは2007年夏頃からの住宅価格の下落、それにともなうサブプライムローンの不良債権化です。このときは一年の時を経て、百年に一度といわれるカタストロフィ(突然の大破局)を迎えることになりました。

 Uber上場、WeWork問題に端を発したバブル崩壊への予兆は、2020年初頭に世界に広まった新型コロナウイルスによってさらに傷を深くし、巨大な金融危機を世界経済にもたらす可能性がいよいよ高まっています。その余波もあり、「スタートアップ・バブル」は大きくはじけるでしょう。