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歌舞伎町の黒服を経て“辞めさせ屋”に……開成卒の30歳起業家が明かす「退職代行ビジネスの裏側」

名門校のアウトロー卒業生――岡崎雄一郎 #2

2020/05/30
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「やりたくないことはやらない」を貫いてきたが……

 インタビューの終盤、岡崎のビッグマウスが復活した。「子供の頃から、根拠のない自信だけはあるんです。賢いし、けっこう気合いも入っているので、絶対にうまく行くだろうって自分では思ってます」。そう力強く言った岡崎だが、“成功”までの具体的な道筋は、今もまだ描けていないようだ。

「やりたいことをやって、やりたくないことはやらない。そういうシンプルな発想なんです」。岡崎はこれまでの人生を、そのように振り返る。確かに岡崎は、「やりたくないことはやらない」を貫いてきた。そして、今ではそうした生き方に踏み切れない人たちの背中を押す、新たなビジネスまで生み出した。

 

 しかし、それなりに真剣だった高校時代の部活も、人生で初めて本気になったアメリカ留学も、ストイックなまでに打ち込んだボクシングも、ある瞬間に「本当にやりたいことではない」と気付いてしまった。そうなると、岡崎の撤退は早い。今はビジネスの世界に軸足を置いているが、これが「心からやりたいこと」なのかどうか、やはり確信が持てずにいる。「やりたいことをやる」というのは、それほどに難しいことなのかもしれない。

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「これからやりたいことはありますか」

 それでもあえて、「これからやりたいことはありますか」と問うと、彼らしい答えが返ってきた。「もっとタトゥーを増やしたいと思ってるんですけど、なかなかいいデザインがなくて。あと、行くのも面倒くさくて、やってないんです。本当は顔とかにも入ったらいいなと思うんですけど」

 全身を星柄のドルチェ&ガッバーナに包み、首までタトゥーを入れた開成卒の“好青年”は、そんな言葉を残し、取材会場を後にした。

 自分で自分の人生を決めるというのは、潔く響くけれど実は一番難しい。だから人は何かを始めるにも辞めるにも、他の誰かに助言を求める。「やりたいこと」こそ、誰もが迷いだらけだ。これまでずっと、自分自身で人生を選び続けてきた岡崎も、また――。

 

写真=松本輝一/文藝春秋

岡崎雄一郎(おかざき・ゆういちろう)
1989年生まれ。退職代行を手掛ける「EXIT株式会社」代表取締役社長。私立開成高校を卒業後、アメリカに留学。テキサス州立大学へ入学するも、ボクシングに熱中して中退。帰国後は解体工、型枠大工、歌舞伎町での勤務を経て、現職。Twitter(@okazakithe)でも情報発信中。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

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