そのバットが及ぼす影響は1チームの枠に収まらない
岡本は奈良・智弁学園高から2014年秋のドラフト会議で、巨人に1位指名され、入団した。球団は当初、投手を指名する方針だったが、当時の原辰徳監督が、スカウトから「将来はジャイアンツで4番を打てます。必ず打てるようになります」と進言され、変更したエピソードがある。
右の長距離砲として期待された若者は、入団から3年間で計1本塁打。その才能が開花したのが、4年目の18年だ。高橋由伸監督の若手を積極的に起用する方針に見事に応え、打率.309、33本塁打、100打点をマーク。同年6月には21歳の若さで巨人の「第89代・4番打者」の座に就いた。同年限りで退任した高橋監督から「勝負強さはたいしたもの。頼もしさが日々、増していくと感じる」と高く評価された。
原監督が3度目の監督復帰となった昨シーズンは打率.265、31本塁打、94打点をマーク。交流戦の期間中に不振に陥り、4番を外れたが、134試合で4番を務めた。18年より成績を落としたとはいえ、主砲の役割を果たした。
プレッシャーのかかる巨人の4番は「聖域」と言われる。かつては川上哲治や長嶋茂雄、王貞治、原辰徳らが4番を務め、常勝軍団の重責を担った。その一人である原監督から4番を託された岡本にとって、今季は名だたるレジェンドの系譜に名を連ねるための重要な1年になる。
過去2シーズン、主軸を担った経験を踏まえ、岡本は「(自分が)打てれば勝てる試合が増えるし、打てなければ難しい試合が増えると感じた」とチームの浮沈を背負う自覚を示しているが、そのバットが及ぼす影響は1チームの枠に収まらない。
ようやく開幕日が決まったばかりだった6月上旬にはチームメートの坂本勇人内野手、大城卓三捕手が新型コロナウイルスに陽性反応を示した。幸い軽症で公式戦は無事に開幕したものの、今後も球界に感染者が増えれば、リーグ戦が中断される可能性を残す。それどころか、感染拡大の第2波が来れば、プロ野球はおろか人々の生活すら再び脅かされかねない。
しのびよるコロナウイルスの脅威を感じながらの1年。だが、そういった暗い空気を吹き飛ばし、明るさや希望を示すことこそが本来のプロ野球の役割であり、野球にはその底力があるはずだ。中でもホームランは野球の華。岡本のような若きスターには、日本の明るい未来を切り開く豪快なアーチを1本でも多くかけてほしいと願っている。
◆ ◆ ◆
※「文春野球コラム ペナントレース2020」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/38510 でHITボタンを押してください。
この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。