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典型的な投資詐欺の手口だが……

〈K氏はこの事業のために持ち家を売って賃貸に移り、財産と言えば、現在進めている事業のためにフジャイラに設立した会社の株しかありません。(略)アブダビか日本の企業の参画が決まらなければ、株を買うものはいません〉(16年5月27日のA神父による「K氏の状況説明」)

〈今、東京に来て資源エネルギー庁の課長その他の打ち合わせに来ています。かなり、ドバイ総領事、ジェトロ、ジェイビックが積極的に支援をして、7月末までに日本サイドの参加支援の結論を出すことができるように頑張っています。7月末までに様々な結論が出ることになります〉(同年6月6日、A神父からB神父に転送されたK氏の返事の内容)

高見大司教の名義で書かれた3500万円の振込受付書。振込先はK氏が事務局長を務める“国際NGO”

 もはやどこまでが事実か判別できない。K氏のメールには16年8月10日までに返済計画を提出する、と記されただけで沙汰が途絶える。その約束は果たされることもなく、1週間前の8月3日にK氏が社長を務めるアール社が破産手続きを開始した。

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 メールの内容は、典型的な投資詐欺の手口と見受けるものだ。被害届を出し、K氏を告発するのはもちろんのこと、組織としても適切な管理を逸脱して資金を損なったA神父の刑事上、民事上の責任を追及するのは、大司教区の当然の責務である。

大司教区は事実を“隠蔽”

 だが、この背信的な財産の運用は、後任のB神父が主導した「覚書」を通じて大司教区の債権の一つと“追認”することで、表沙汰にはならなかった。善意で回収に向けて取り組んでいるかたちを装って、巧妙に隠蔽したのだ。

「覚書」から1年半後の18年7月、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は世界遺産に登録され、地元は沸いた。国際記念物遺跡会議(イコモス)が登録を勧告した際、高見三明大司教は「(構成資産となる教会堂などの)所有者の一員として率直に喜びたい」とコメントした。

長崎・大浦天主堂 ©iStock.com

 観光客が増えることを見越してか、12の構成資産の筆頭格である大浦天主堂の300円の拝観料について長崎大司教区は、15年に600円に、18年からは1000円にと3年で実に3.3倍も値上げした。教区の収支が逼迫し、老朽化していく教会施設の修繕費も賄えない、というのが理由だった。

 だがこうして振り返れば、仲間内の神父の責任には大甘で目をつぶる一方、信徒や観光客など簡単に取れるところからは取るという、宗教法人の公益性とはかけ離れた姿が浮かび上がる。