終電がなくなった時、急な体調不良の時、道に迷ってしまった時。緊急事態であればあるほど、タクシーは便利でありがたい存在だが、女性のなかには「タクシーに乗るのが苦手」と話す人も多い。時にその理由は、タクシードライバーとの苦い思い出に起因することもある。(全2回の1回目/#2に続く)
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「とりあえず中野に着いたら起こすから」
松永美奈さん(仮名・25歳)は、飲み会の帰りに乗ったタクシーで散々な目に遭ったと話す。
「その日は、目黒で友だちと飲んでから中野にある彼氏の家に行く予定でした。初老のドライバーに住所を伝えると『いや、住所とかいいから。俺ナビ使わないから、近所の目立つ建物を教えてよ』と。土地勘もなくその日は体調が悪かったので、説明できないと伝えても『とりあえず中野に着いたら起こすから』と言われました」
車内でウトウトしていると、肩を揺さぶられて起こされた松永さん。再度、番地を伝えても、またしても「近い建物を言って」と凄まれたという。「一体この人はなんなんだ」という不信感を抱きつつ、グーグルマップで説明をして再び目を閉じた。
「また数分後に揺り起こされたんですけど、目を開けると肩ではなく胸のあたりに手を置いていたんです。その瞬間に完全に酔いが醒めてとっさに料金表示を見たら、明らかに料金が高い。遠回りされたようでした。冗談じゃないと思って、証拠としてドライバーの名前や番号をスマホのカメラで撮ろうとしたら『何してるんだ!』と真っ赤な顔で激昂したんです。身の危険を感じたので、その場でお金を払って降りました」
タクシーを降りたあと、彼氏に迎えに来てもらったという松永さん。「それ以来、怖くて一人ではタクシーに乗りにくいです」とため息をついた。