タクシーの車内で男性ドライバーと女性客がふたりきり。タクシードライバーとのトラブルで、思い出すのも嫌なほど苦い体験をした人は少なくない。ドライバーの出方次第で、女性客は気を張らなければならない瞬間がある。(全2回の2回目/#1から続く)

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「チューしてくれたらタダにするよ」

 北川はるかさん(仮名・28歳)は、学生時代の経験がトラウマになっているという。

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「その日は終電を逃してしまい、自宅よりも近くにある彼氏の家までタクシーで帰ることにしました。それでも、片道8000円なので大学生には痛い出費でしたが、駅前のタクシー乗り場に停まっていたタクシーに乗り込みました。後部座席に乗ろうとすると『後ろは汚れてるから、よかったら前に乗りませんか?』と、提案されたんです」

写真はイメージ ©iStock.com

 後部座席を見ても汚れている様子はなかったが「車酔いもするし、時間も長いから前でいいかな」と、軽い気持ちで助手席に座ったという。ドライバーは中年の男性で「隣に座ったので、顔や表情がよく見えた」と北川さんは話す。

「初めは、世間話程度で特に問題はありませんでした。でも、徐々に『かわいいですね。ぶっちゃけ好みのタイプだから前に座ってもらったんですよ』と、隣でニヤニヤ笑いはじめたんです。その後も『彼氏いるんですか?』『結構胸が大きいね~。Fカップ?』『実家住み? 一人暮らし?』といった質問が続きました。相手がハンドルを握っていると思うと逆ギレされたら怖いので、適当にあしらうしかなかったんです」

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 愛想笑いで切り抜けようとするも、相手はどんどんヒートアップ。しまいには「今日はもう仕事が終わるから、君の家に行ってもいい?」「チューしてくれたらタダにするよ」などという発言を繰り返したという。

「1時間近くかけて、やっと目的地についたのですが『お小遣いあげてもダメ? ほんとにタイプなの』と、なかなか運賃を受け取ってもらえませんでした。そこに彼氏が助けに来てくれて『彼女、下ろしてもらっていいですか?』と彼が窓を叩くと、かなり慌てた様子で会計できました。走行中に彼氏にメールで連絡して、下車する場所に来てほしいとお願いしておいたんです。1人だったら家についてきそうな勢いで、本当に気持ち悪かった」

 そのドライバーは、8000円を5000円に割り引き、北川さんを解放したという。取材を進めると、彼女のように、ドライバーから性的なからかいや嫌がらせを受けた経験のある女性も少なくないことが分かった。