これはある種、放火魔の典型例と言えると思います。放火魔の心理は理解したくありませんが、燃えやすいものに火を付けて、メラメラと火柱が上がる光景をみることでスカっとする……といったことなのでしょうか。彼らにしてみればモノが燃えれば十分で、物理的に誰かを傷つけてやろう、といった意志は案外ないのかもしれません。
そう考えると、空き家になった一軒家はまさに狙い目です。新聞やテレビで事件のことを知れば、今はそこに誰も住んでいないこともわかります。その後、私が訪れたときには、すでに家は取り壊され、現場は完全に更地になっていました。
この事故物件で異常だったのは……
こうして振り返ってみても、この事故物件で異常だったのは事件のスピードです。母親の病死、祖母の殺害、そして自宅の全焼。これらの出来事は全て、たった1カ月の間に起きていたのです。
始まりは母親の病死か……それとも、男が口にした実に奇妙な“嘘の自白”だったのか。いずれにしても、この事故物件は世にも珍しい、数奇な運命を辿ることになってしまいました。
今回は1カ月の間に複数の“事件”が起きた事故物件を紹介しました。一方で、もっと長いスパンで観察することで、不思議な現象に気づける事故物件もあります。次は、そうした事例についてお話ししましょう。
(後編に続く)